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ユーロ圏首脳会議におけるドイツ攻略作戦

 28日から29日に開催されたユーロ圏・欧州連合(EU)首脳会議では、踏み込んだ危機対策が発表され、どうせたいした政策は出ないと冷ややかに見ていた市場に、冷水ならぬ熱湯を浴びせる結果となった。このあたりの動向については、30日の日経新聞や読売新聞朝刊(我が家の購読紙)にその経緯が書かれており、いったい何がブリュッセルで起きていたのかをそこから探ってみたい。

 28日の会議は長丁場となったが、午前一時に初日の討議を終えた英国のキャメロン首相やデンマークのシュミット首相らは相次いで会場を後にしていたそうである。しかし、ここにメルケル首相やオランド首相らの姿はなかった。実はこのとき、ユーロ圏の緊急首脳会議が開催されていたのである。通信社からは、断片的ながらイタリアが基金による国債買い入れ案で合意出来ない限り成長戦略にも応じないとの強い姿勢を示したことや、メルケル首相が予定されていた記者会見をキャンセルすることなども伝えられていた。

 28日にスペインの10年債利回りは、ユーロ圏首脳会議では具体策が打ち出されないとの懸念から一時7%台に乗せてきた。ところがその後押し目買いが入り、スペインの10年債利回りは6.93%とほぼ前日比変わらず近辺に戻していた。また、米国株式市場でダウ平均は3日ぶりに反落したものの、こちらも引けにかけて下げ幅を縮小させるなど、市場は断片的な報道などから何かしらの兆候を感づいていたような動きを示していた。

 報じられるところによると、最初に動いたのはイタリアのモンティ首相とスペインのラホイ首相だったようである。モンティ首相は市場安定化策で合意が得られなければ、日曜まででも首脳会議を続ける覚悟だと公言していた。そもそもユーロ圏の首脳会議は27か国の欧州連合(EU)首脳会議後に開催予定であったが、28日にEU首脳会議が開幕すると、イタリアのモンティ首相とスペインのラホイ首相は、唐突に1200億ユーロの成長戦略等の議事に対し、「首を縦に振らない」と言い始めた。このため急遽、「臨時」のユーロ圏首脳会議が開催されることになったのである。

 つまり今回、唯一の目立った対策ともいえた成長戦略を人質にとり、踏み込んだ対策を迫る駆け引きに出たのである。これにフランスのオランド大統領が直ちに呼応する。フランス、イタリア、スペインが結託し相対するのが、ドイツのメルケル首相となる。

 マーケットが欧州連合(EU)首脳会議では、踏み込んだ危機対策など出ないと高を括ったそもそもの理由は、ドイツのメルケル首相が25日の講演で、ユーロ共同債、共同証券、欧州預金保険に関して経済的に間違っており非生産的だと発言したり、自分が生きている限りは欧州の債務共有化はないとの姿勢を強調していたためである。市場では、危機対策としてユーロ共同債の発行が意識されており、それにメルケル首相が強い反対を表明していたことで失望感が強まっていたのである。

 ところが、ドイツは銀行の直接支援という手段に対し、強力な銀行監督体制ができるなら、その可能性がありうることをドイツの政府高官が示し、ドイツ側としても市場の動向を見てか、柔軟な姿勢に変わりつつあった。これが今回の想定外の合意を生むことになった。ショイブレ財務相は、EUの権限強化を条件に南欧支援の拡充を容認するとのサインを出していたそうであるが、ドイツがこれまでの頑なな姿勢を貫いてしまうと、EU首脳会議が立ち行かなくなり、それはつまり市場からの仕打ちを受け、さらなる危機感を強める結果ともなりかねなかった。

 こうして長時間にわたる協議の末、今回の危機対策が打ち出された。ここにはユーロ共同債の導入は盛り込まれてはいなかったが、フランス、イタリア、スペインの連合側がドイツに勝利した格好となった。ただし、南欧支援と引き替えに、ドイツはユーロ圏の銀行を一元管理する制度の創立も盛り込まれるなどドイツにもかなり配慮した内容となった。

 日経新聞によると、EU大統領とバローゾ欧州委員長の二人が開いた現地時間の早朝の記者会見に出席した記者は数えるほどであったそうである。結果として、マーケットを大きく動かすことになったスクープ記事が書けたのは数社だったことになる。マスコミもどうやら期待していなかったようであるが、いわゆる記者の勘として、何かが動いているという予兆のようなものは掴めなかったのであろうか。このあたりの状況も興味深い。

 ユーロ圏でのこのような政治の駆け引きは非常に面白い。背景には危機感があり、面白いと片付けてはいけないかもしれないが、これも政治であろう。果たしてこのような外交上の駆け引きができような日本の政治家はいるのであろうか。何かつまらない駆け引きばかりしている政治家はいるようであるが。


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by nihonkokusai | 2012-06-30 09:52 | 国際情勢 | Comments(0)
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