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財政再建のための消費増税ではないのか

 言うまでもなく、社会保障と税の一体改革なるものは、日本の財政悪化に歯止めをかけることが目的のはずである。

 2000年代から社会保障費が急激に増加してきたが、これは高齢化に伴う自然増や基礎年金の国庫負担割合引き上げ、子ども手当の創設などが要因となっている。社会保障関係費はほぼ一貫して増え続けている。それに対して、税収など歳入面では、景気低迷による影響に加え度重なる減税も影響し、減少している。このように日本の政府債務残高の増加要因は、社会保障費の増加がその主因であり、そこに税収の落ち込みも影響している。

 日本の財政健全化を進めるには歳出と歳入両面での改革が必要であり、だからこそ「社会保障と税の一体改革」なのであろう。今後も伸びが予想される社会保障費に対して、税収がこのまま落ち込みを続ければ国債への依存度はますます大きくなりかねない。

 足下の日本の国債の需給からみて、そう簡単に国債が暴落するようなことは考えづらい。しかし、このような好環境が永久に続くことのほうが考えづらいことも確かであり、国債市場が好環境のうちに手を打たねば、もし日本に対し欧州のような信用不安が生じて長期金利が上昇してからでは、手の打ちようがない。

 財務省の「平成24年度予算の後年度歳出・歳入の影響試算」によると、消費税の引き上げにより、プライマリーバランスが改善されることは確かであるが、今後の国債発行額を見る限り、消費税の引き上げを加味してもなお毎年度45兆円規模の新規国債が発行される計算となっている。

 名目経済成長率3%程度を前提とし消費税の引き上げを加味した試算でも、差額部分は2012年度44.2兆円、2013年度45.4兆円、2014年度44.6兆円、2015年度44.3兆円と44兆円以上の規模が続く予測である。

 この試算は長期金利の2.0%が前提基準となっている。この前提からの変化幅がプラス1%の場合、国債費の増加は2013年度が1.0兆円、2014年度2.4兆円、2015年度4.1兆円。そしてプラス2%の場合、国債費の増加は2013年度が2.0兆円、2014年度4.9兆円、2015年度8.3兆円となる。反対にマイナス1%の場合には、2013年度が-1.0兆円、2014年度-2.4兆円、2015年度-4.1兆円となる。

 利払い費に絡んでは、「金利ボーナス」と呼ばれる利払い費用の抑制効果がなくなり、その分増加しやすい状況となっていることにも注意が必要である。金利ボーナスとは、過去の高い金利の国債が償還期を迎えると、その分は低い金利で借り換えることになり、その分の利払い負担が軽減される効果のことである。しかし、1990年代後半以降は長期金利の低位安定が長く続き、その抑制効果は次第になくなりつつあり、今後は国債残高の増加がもろに利払い費に影響する状況となっている。

 このように消費税の引き上げを加味しても国債発行額の抑制は限定的であり、長期金利がもし上昇してしまうと利払い費もそれに応じて増加してしまえば、増税分はあっさりと打ち消され、財政はさらに悪化しかねない。だからこそ、日本の長期金利の跳ね上がりを抑制するためにも、財政再建に向けての姿勢を示す必要がある。

 ところが、消費増税を行ったとして、その分を景気刺激策に使ってしまえば、それは財政再建とは矛盾する。それにより将来の税収が増加するとの保証があれば良いが、過去の財政出動による税収増への効果はどれほど認められたのか。今回の消費増税に景気対策もセットとなっているのであれば、財政再建への意味合いはその分、薄れることにもなる。

 国債市場は足下の好需給に支えられ、簡単には売り圧力が高まるようなことは考えづらい。しかし、市場に将来の財政再建に対する懸念が次第に蔓延してくるような事態となれば、現在の国債相場がかなりの高値圏にあることも手伝い、相場が神経質な動きを見せる可能性も否定できない。


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by nihonkokusai | 2012-06-29 09:44 | 財政 | Comments(1)
Commented by AE86 at 2012-06-29 13:27 x
社会保障の増加と不況による税収減。これに加えて、本当に怖いのは少子化ではないでしょうか。労働人口が激減すれば、税金払ってくれる人がいなくなります。
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