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日本国債が政治の動きに鈍感な理由

 国債市場にとり、財政再建の行方は今後の国債需給などにも影響するはずのものであり、その影響力は大きいように思われるが、現実には今回の社会保障と税の改革法案の行方に関しても、あまり反応していない。日本の長期金利が低位安定しているのは、社会保障と税の一体改革関連法案は可決されるであろうとの楽観的な見通しが強かったため、とは言えまい。昨日、衆院で可決されたものの、事前にマーケット参加者の予想は可決される可能性は五分五分との見方も強かったはずである。このため多少なりとも、相場の変動要因に消費増税の行方が組み込まれているとすれば、民主党と自民、公明との折衝の状況を見ながら、もう少し神経質な動きを見せていてもおかしくはなかったはずである。

 債券市場では日本国内の政治の動きへの反応は限られている。2010年9月の民主党代表選挙で小沢前幹事長が立候補し、小沢氏が勝利すれば、ばら撒き政策による国債増発等があるのではないかと危惧され、その結果、債券先物が売られた小沢ショックなるものがあったが、それも一時的なものであった。

 何故、国債市場ではその発行額に大きな影響があるはずの政治動向に影響を受けにくいのか。この背景としては、先々にたとえ国債消化への懸念があろうとも、足下の需給についてはほとんど不安がないためであろう。市場に国債へのニーズがある限り、国債の急落はむしろ買い控えているような投資家の絶好の押し目買いチャンスと見なされてしまう。日本の信用不安を意識してのヘッジファンドなどによる債券先物の売り仕掛けがことごとく失敗しているのも同様の理由によるものである。

 日本国債の需給が安定しているのは、40兆円を超す新規国債が毎年度のように発行されようが、それを消化しうる資金が存在していることによる。国内資金で消化しうるからという見方もあるが、とにかく買い手が存在しているためである。

 1998年の海外格付け会社による日本国債格下げや運用部ショックを受けて、日本国債への危機説が高まったが、この時点でまだまだ国内資金に余裕が存在していた。その後も金融システム不安やITバブルの崩壊などもあり、金融不安や経済の低迷により安全資産としての預貯金に資金が流入した。また貸出の低迷、銀行への公的資金導入、日銀による国債買入増額を含めての金融緩和による市場への資金流入等もあり、国債に対して資金が流入しやすい構図が続いてきていた。

 リーマン・ショックや欧州の信用不安などを経て、日本の財政はさらに悪化するものの、日銀によるあの手この手の金融緩和策に加え、円高進行にともなう海外投資家による日本国債の購入増などもあり、とにかく国債に資金が回ってくる構図はむしろ強まるばかりとなっている。

 もちろん先々の日本国債への懸念は、大手銀行のトップもそのリスクを指摘するなどしているように、全く無視されているわけではない。しかし、それ以上に足下需給からは、そのリスクを意識してのポジションを取りにくくさせている。都銀は4月、5月と公社債を売り超しとはなっており、またここにきての超長期ゾーンの上値の重さなども、その背景には、日本国債への信用リスクの先行きへの懸念が多少影響しているのかもしれないが、せいぜい買いを控える程度のことしかできない。たとえば国債の価格下落に保険をかけようと債券先物をヘッジ売りしても、踏まされてその分の損失を被るだけである。

 一部の地銀が、日本国債へのリスクを意識してその保有を減らし、その分外債の比率を上げるとの報道があった。信用不安で日本国債の価格が急落すれば、外為市場では円安となり、その意味ではこれも保険になりうるが、その分為替リスクが増加する。日本国債は現状、そう簡単に暴落するようなことは考えづらく、信用不安での円安に賭けるとすれば、過去のオオカミ少年と同様の結果となることも予想される。この場合、日本国債への保険の意味合いで後ろ向きにポジションを調整するより、むしろ円高修正を予想しての外債運用と割り切ったほうが、運用担当者としてもやりやすいのではなかろうか。

 社会保障と税の一体改革関連法案は可決されるであろうが、その先、いったい政局はどのように変わるのかはまったく予測がつかない状況にある。もしこれがギリシャやスペインで同様の事態となれば、かなり長期金利は神経質な動きをしていたに違いない。しかし、日本国債については足下の好需給が先々のリスクも見えなくしている。だから政治の動きには鈍感となっているともいえるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2012-06-27 09:58 | 国債 | Comments(0)
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