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日本の長期金利に対する学習効果

 5月31日に日本の長期金利は0.810%まで低下し、2003年7月以来の水準をつけてきた。これについては18日の牛熊コラム「日本の長期金利はどこまで下がるか」にてもコメントしたが、欧州の信用不安が解消されない限りは、米国やドイツの長期金利の低下と相まって、日本の長期金利もその低下余地を探ることが考えられた。

 現実に30日の欧米市場では、スペインへの懸念の強まりを背景にリスクオフの動きを強めた結果、ドイツ、英国、米国の長期金利は記録的な水準に低下した。ドイツの10年債利回りは過去最低を記録し、英国の10年債利回りもやはり記録がある中での過去最低に。米国の10年債利回りも、1.6%を割り込んできた。

 欧米の長期金利が記録的な水準まで低下しているにもかかわらず、日本の長期金利の低下ピッチは比較的緩やかなものとなっている。もちろん水準としては、2003年以来の水準ではあるが、その2003年6月11日につけた過去最低利回りは20年債で0.745%、そして10年債では0.430%である。これはまだ低下余地があるとの見方もできるかもしれないが、投資家をはじめとして市場参加者は国債を買い進むことにはかなり慎重になっているともいえる。

 これは以前にも示したが、過去の10年債利回り、つまり長期金利での1%割れとなったあとには、大きな反動を経験していたためと思われる。つまり学習効果も働いていよう。そのひとつの現れとして、24日の20年国債の入札とその後の動きがあった。18日に20年国債は1.6%を割り込み1.570%近辺まで低下していた。しかし、その後23日には1.665%に利回りは上昇した。24日の20年国債入札はやや低調な結果となり、27日から28日にかけて1.690%近辺まで利回りが上昇していた。この背景には生命保険会社がコスト等を意識したことで、入札を含めてあまり積極的に買いを入れていなかったことも要因ではないかとみられた。そのため業者が入札で抱えたポジションを売りに出して相場は下げ、そのポジション調整売りが一巡したあとで銀行などからの押し目買いが入ったものとみられる。

 この生保の動きが思い起こされるのが、2003年6月17日に日本の債券のバブル相場がはじけたきっかけである。日経平均株価が9000円台を回復したことに加え、この日実施された20年国債の利率が1%割れのクーポンとなり、日本の最大手の生命保険会社がこの水準では超長期国債の購入を手控えるとの報道があり、これをきっかけにして、債券相場が急落したのである。この債券相場の急落はたしかにVARなどによる銀行の異常なまでの買い上げが大きく影響していたことは確かであるが、きっかけは超長期に対する生保の姿勢であったともいえる。

 そういえば、1998年末の運用ショックの際も日経新聞の小さな囲み記事がきっかけになったと記憶している。1998年にも長期金利は1%を割り込む水準まで低下しており、その反動との見方もできた。

 このあたりの過去の動きが、日本債券市場関係者には学習効果として働いているとみられる。それに対してドイツや英国、米国のここにきての長期金利の低下は過去にはあまり経験がなく、2003年の日本の債券相場の如く、まずはどこまで低下してくるのかを試してきているようにもみえる。あとから見ればバブルの動きに見えようが、買われている最中はその買い要因に目が向けられることで、その後の反動を見越しての売りは仕掛けづらく、むしろ大きく踏まされる可能性が強い。相場の大きな流れには逆らわない方が良い。

 しかし、日本の長期金利については、特に国内要因主体で低下しているわけでもないため、比較的冷静な面もある。円高株安などの要因もあり、債券は売りづらい状況にあるが、この大きな嵐が過ぎ去るまでは、2003年の記憶が残る限り、大手銀行も大手生保も積極的に国債を買い進むようなことは手控えてくる可能性がある。少なくとも2003年につけたような長期金利の0.5%割れまでの低下は考えられず、日本の長期金利の低下幅はかなり限定的になるものと予想している。


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by nihonkokusai | 2012-06-01 10:02 | 債券市場 | Comments(0)
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