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2年国債入札における事務トラブル

 2012年5月29日の2年国債入札において、珍しいアクシデントが発生した。事務トラブルにより2年国債入札が再入札となったのである。この原因とともに、その影響等について考えてみたい。

 現在、利付国債の入札は10時30分に利率や回号、償還日等々の条件が通知される。入札締め切りは12時ちょうど。入札結果の発表は12時45分となっている。

 ところが29日の入札結果の発表時間前に、財務省は「入札事務トラブルの発生により、結果の発表時刻は、予定時刻(12時45分)から遅れる見込みです」との通知を出した。

 この時点では、何が起きたのかは市場参加者には具体的に知らされておらず、「入札事務トラブル」という言葉からある程度、推測せざるを得なかった。懸念されたのは入札で使われる日銀ネットそのもののシステムトラブルであったが、事務トラブルということで、システムそのものではなく、どうやら人為的なミスであった可能性が高いと思われた。

 日本の財政にも大きな影響を与えかねない国債入札のトラブルではあったが、市場はかなり冷静に対応した。債券先物はむしろ買いが入り、143円43銭の高値をつけたぐらいである。このあたり、大きなトラブルではないとの認識もあったであろうし、2年国債ということでの安心感もあったとみられる。

 ここで国債市場関係者以外の方には説明が必要なことがある。日本国債の入札は財務省が担当しているが、利払い、償還、そして決済等は日銀が行っており、入札における事務作業も、通知を行ってからは日銀の仕事となる。入札の入力には、財務省とのオンラインシステムとかがあるわけではなく、日本の金融の基幹インフラである日銀ネットが使われているのである。国債入札のシステムの設定等は日銀の担当者が行っており、いち早く国債入札の結果を知るのも日銀の担当者と言うことになる。

 今回のアクシデントについて、入札事務トラブルとの表現が使われ、それはつまり日銀の国債関係の担当者による何かしらのミスがあったということが考えられた。実際に日銀の事務方が誤った入力をしたことが原因とも報じられた。

 国債入札では、その落札実績に応じて四半期ごとの落札限度額を増減させる仕組みがあるのだが、日銀の担当者がその情報を更新し忘れたことが原因のようであった。入札の際に日銀ネットの入力に際しては、証券会社などの担当者も数度のチェックが必要となる。当然ながら日銀の担当者はその設定等に対しては、それ以上に二重三重のチェックを行っていたようだが、それが機能しなかったとの説明があったようである(ロイターの記事を参考)。

 今回のアクシデントにあたっては、日銀ネットを使う作業でありながら、短時間のうちに再入札の実施を決めるなどのすばやい対応もあり、大きな影響が出ることはなかった。このあたり財務省や日銀担当者が非常事態に対して適格に対応した結果と思われる。

 今回は2年国債であったことも、その影響を限定させた。日銀の「強力な金融緩和策」も手伝い、銀行からの2年債へのニーズは強い。現実に昨日の2年国債の再入札における応札倍率は10倍に近かった。さらに2年債では、残存7年の国債に連動する債券先物でヘッジを使うことは考えづらく、このあたりも再入札の結果発表が15時15分と、先物の大引けあととなったことによる影響もなかった。もしこれが10年債とかの入札であれば、市場参加者からの苦情等が出ていた可能性はある。

 29日の事務トラブルで、財務省や日銀の国債担当者はかなり冷や汗をかいたのではなかろうか。しかし、このような人為的トラブルは完全に無くすことはできない。むしろ、国債入札がシステム化されてから、ほとんどトラブルらしいトラブルがなかったことのほうが奇跡に近いような気がする。今回のことはむしろ良い教訓とともに良い経験になったのではなかろうか。今後も日本国債の大量発行は続く。日本国債の信認を維持させるには、このような裏方の仕事もたいへん重要であり、小さなミスが大きな事故とならぬよう心がけていただければと思う。


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by nihonkokusai | 2012-05-31 09:53 | 国債 | Comments(0)
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