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4月27日の追加緩和の理由

 2012年4月27日に日銀は資産買入等の基金を5兆円程度増額するという追加緩和策を決定した。資産買入等の基金を65兆円程度から70兆円程度に5兆円程度増額する。内訳としては、長期国債(残存1年以上3年以下)を10兆円程度増額し、期間6か月の固定金利式・共通担保供給オペは応札額が未達となるケースが発生しているため、これを5兆円程度減額する。そしてETFの買入を2千億円、J-REITの買入を百億円程度増額する。

 何故、このタイミングで追加緩和を行ったのか。それと緩和効果を引き出すために、いろいろと工夫もみられたが、このあたりのやりとりについて28日に発表された金融政策決定会合から探ってみたい。

 追加緩和の理由として、「依然として様々な不確実性があることを踏まえ、委員は、そうした見通しをより確かなものとするため」とある。不確実性は常に存在しており、追加緩和の理由としては少し弱い。しかし、市場や政府関係者からの追加緩和要求や、同時に発表された展望レポートとの兼ね合いなどがあったとも推測され、不確実性を理由としたのは致し方のないところか。

 今回の基金増額が国債主体となったことについて、「複数の委員は、日本銀行の国債買入額がきわめて多額となっていることを踏まえると、日本銀行の強力な金融緩和が財政ファイナンスと誤解されることのないよう、細心の注意を払う必要があると付け加えた」とある。基金による国債買入を含むと、今年末には日銀の保有する国債が、日銀券残高を上回る計算となり、このあたりも意識しての発言と思われる。現状、市場では日銀の国債買入について、財政ファイナンスと認識して懸念する見方は表面上は出ていない。

 資産買入等の基金の増額にあたって議長が、執行部に説明を求めている。執行部から、J-REITは少額ならば買入増額の余地はあるとし、長期国債については、買入額を大幅に増額し、かつ残存期間を1~2年程度に限定した場合 、円滑に買入れを進めていくうえで先々支障が生じる可能性がある。日銀の財務の健全性という観点からみると、ETFについては、価格変動リスクが大きい点に留意する必要があるとの指摘があった。

 これを踏まえて委員は議論を行ったとあるが、これは事前に検討されていたものと推定される。6か月物の固定金利オペにおいて応札額が未達となるケースも配慮され、固定金利オペを5兆円程度減額し 、長期国債の買入れに振り替えることが適当との認識を共有したとある。しかし、事前に市場参加者からこのような予想はほとんど出ておらず、このあたりは工夫がみられたとの認識であった。

 ここで用語の使い方について、少し注意したいのが「未達」と「札割れ」である。6か月物の固定金利オペについて日銀は「未達」と表現している。日経新聞などではこれを「札割れ」としているが、確かに目標額に対して達成しておらず、札割れが生じているのだが、ここでは少し使い分けも必要となる。つまりオペや入札で目標額に達してなくても、別なかたちで目標額がカバーされれば、それは「札割れ」と表現されることが多い。2002年9月の日本の10年国債入札で生じたものや、2011年11月のドイツ国債の入札で起きたのは、それぞれシ団や中央銀行が残りを一時的にカバーしたことで、政府は目標とした資金は調達できたため「札割れ」と表現された。これに対し目標額を完全に調達もしくは供給できない場合は、これと区別し「未達」との表現が使われる。今回、日銀も「札割れ」と表記しなかったのはその理由によると推測される。

 そして「2年までの金利がきわめて低い水準まで低下してきていることを踏まえると多額の長期国債や社債の買入れを円滑に進め、長めの金利に効果的に働きかけていくためには、買入対象年限を3年まで延ばすことが適当との考えで一致した」とあるが、年限を5年まで延ばすことを主張した委員はいなかったのであろうか。現在、利付国債は2年債の次は5年債が発行されており、現在3年債の発行は停止されている。新発債はそこそこ流動性はあるが、いったんポートフォリオに組み込まれたものは、新発債ほどの流動性はない。このあたりのことを配慮すると5年まで延長してはとの意見があったとしてもおかしくはなかったはずである。

 これについては、「期間3年以下の貸出の割合が高く、それに概ね対応する期間の金利に働きかけることが引き続き効果的と考えられる」との付言もあったのを見ても、事前に3年までの延長で問題ないとの認識が出来ていたのかもしれない。

 「本年中の長期国債の買入れペースがすでにきわめて大きな金額となっていることを考えると、長期国債5兆円分については 、2013年入り後、同年6月末を目途に買入れていくことが適当との認識を共有した。」

 このあたりの技術的なことが、あっさりと共有されたとも考えづらく、事前に検討されていた可能性が高い。また、2013年6月末を見据えた数字も示されたことで、現在の買入ペースを来年に入っても行うとすれば、あと5兆円程度の国債買入等も可能との見方も出来ることとなる。

 このあと、「消費者物価の前年比上昇率1%が見通せるまでは、機械的に基金の増額を続けていくという誤解が一部にみられることについて」の懸念も示されたが、これは2月14日のバレンタイン緩和により、「誤解」というより「期待」を生じさせて、それが為替市場や株式市場に影響を与えたとも言える。もし市場心理も意識しての金融政策となるのであれば、勝手な市場の解釈(?)について無理に誤解を解くこともないように思うのであるが。


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by nihonkokusai | 2012-05-29 10:06 | 日銀 | Comments(0)
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