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付利引き下げの可能性と市場との対話(白川日銀総裁会見より)

 2012年5月23日の金融政策決定会合の終了後に行われた白川日銀総裁の会見の内容が日銀のサイトで公表された。今回はこの中から気になったところをピックアップしてみたい。

 まず、5月16日に日本の2年債利回りが0.1%割れとなり、この日にオファーされた日銀の基金による国債買入(残存1年以上2年以下)で初の札割れが発生した要因のひとつともなった当座預金の付利水準の引下げに関して白川総裁は下記のように答えている。

 「当座預金の付利水準の引下げについては、日本銀行として金融緩和政策を行うことによる金利低下の効果と、他方で市場金利が低下し過ぎて短期金融市場における流動性が低下し、いざという時に市場参加者が資金調達を行おうとしてもなかなかできないという副作用があります。その双方を勘案した上で、現在の枠組み、つまり、0.1%の超過準備への付利金利と、0~0.1%程度の金利誘導目標という組合せのもとで、金融緩和効果が最大限発揮されると考えています。従って、それらの金利の更なる引下げは、デメリットが大きいという点で、現在の水準が実質的なゼロ金利だと考えています。」

 この表現から見る限り、日銀は付利水準の引下げを行う可能性は極めて低いものと思われる。実際に付利水準の引下げをしたとしても、実質的な緩和効果は極めて限定的であり、これをゼロとしてしまうと固定金利オペの応札等が減少し、短期金融市場における流動性低下も避けられない。このあたりのことを意識すれば、追加緩和としての付利水準の引下げは、日銀の選択肢には現状では入っていないと思われる。

 そして、こちらは外為市場などで少し材料視されたとみられる「強力な金融緩和を推進していく」という表現が今回の金融市場調節方針に関する公表文から消えたことについての質問があった。ちなみにこれを削除したことで、日銀が金融緩和に前向きの姿勢が中立に変わったのかとの思惑も市場では出ていたようである。

 これに対して総裁は、「日本銀行が中立的なスタンスになったということは全くありません。日本銀行の政策スタンスは、4月の展望レポート発表時の公表文に書いた通り、「強力な金融緩和を推進していく」ということで、全く変わっていません。」と答えている。

 しかし記者からは畳みかけるように、「最近、行内の人事異動が発表されましたが、これは政策姿勢と何ら関係ないという理解でよいかどうか、確認させて下さい。」との質問が出ていた。

 ちなみに日銀は5月11日に金融政策を立案する企画局の門間一夫局長が政策担当理事の理事に昇格し、政策担当理事の雨宮正佳氏が大阪支店長となり、後任の企画局長には内田真一氏が就任している。このタイミングでの異動は極めて異例とみられた。当然ながら、この人事異動により金融政策のスタイルが変化するのではとの観測は、特に記者の中では当然あったはずである。それがこの「強力な金融緩和を推進していく」との表現の削除に影響があったのではと思われても致し方はないところではなかったろうか。

 「これはしつこいようですが、全く関係ありません。日本銀行はオフィシャルな文章で「強力な金融緩和政策を推進する」と 2月に発表し、4月の文章にも書いています。ご質問は、「その文章を反故にする」ような趣旨に聞こえましたが、そうした意図は全くありません。そうした誤解がないように、皆さんの報道をよろしくお願いします。それから、人事と政策は全く関係ありません。」

 果たしてこれを額面どおり記者が受け取ったかどうかは定かではないが、政策そのものを決めるのは確かに決定会合での政策委員ではあるが、表明文などにはそれを作成する企画担当者が変われば、表現方法に変化があってもおかしくはない。市場はそれに対してやや過剰に反応した面もあるが、ここに日銀が何かしらの意図を秘めていると推測されてもやむを得ないものでもあったと思われる。このあたり、日銀が市場との対話を重視するのであれば、必要以上に憶測が出るようなことは避けるべきではなかったかと思われる。

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by nihonkokusai | 2012-05-27 09:43 | 日銀 | Comments(0)
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