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4月27日の追加緩和の目的に潜むリスク

 5月10日の白井さゆり審議委員による秋田県での講演内容が日銀サイトにアップされた。白井委員は欧州動向にも詳しいので、そのあたりの発言内容にも注目していたが、今回はそれよりも、4月27日になぜ日銀は追加緩和を行ったのか、その理由に関する発言内容を見てみたい。

 「なお、今回の金融緩和の強化については、1月の中間評価時点と比較して、経済・物価情勢が下振れていないにも関わらず、なぜこのタイミングで緩和が必要であるのか、疑問に思われる方もいるかもしれません。」

 4月27日の日銀の追加緩和について、サプライズと感じた市場関係者は皆無であったと思われる、むしろ、追加緩和をしなかった方がサプライズであったはず。経済・物価情勢よりも、2月のバレンタイン緩和による日銀のスタンスの変化が、市場に追加緩和を期待させるとともに、日銀からも追加緩和を示唆するような発言も相次いでいた。

 「この点、私は、わが国経済・物価見通しに対する不確実性が依然として高い点を強調しておきたいと思います。経済・物価情勢に足もと明るい兆しがみられ、先行きも回復ないし改善が見込まれるからといって、そのシナリオがそのまま実現するとは限りませんし、実現するとしてもそのペースは不確実です。近年を振り返っても、わが国経済が持続的な成長軌道に乗り、物価が上昇しつつあるようにみえても、様々な理由で最終的にこうしたシナリオの実現に至らなかった事例もみられます。」

 果たしてこれを追加緩和の理由にして良いのであろうか。経済・物価見通しに対する不確実性は常に存在している。たしかにイラン情勢などの影響を受けての原油価格動向や、欧州の債務不安、さらに欧米などの景気動向の先行きは不透明ではあるが、これは今に始まったことではなく、今後も同様の状態が続く可能性は高い。

 「その意味で、今回の『展望レポート』で確認されたように、わが国経済において前向きの経済活動が広がってきたタイミングを捉えて、これらの動きを確実にするために金融緩和を強化することが重要であり、同時に、日本銀行の金融政策上のコミットメントに対する揺るぎない意思を示す点からも適切であると考えています。」

 日銀が景気・物価の上昇基調を見計らって、それを後押しする格好で追加緩和をしてきた例はこれまでにもあった。むしろそのようなタイミングのほうが緩和効果は出やすいと思われるが、もしそれを理由としてしまうと、景気・物価の先行きが不透明であり、多少、回復の兆しが見えていたとしても日銀は追加緩和をおこなってくるとの期待感を強めてしまうことになりかねない。

 日本銀行の金融政策上のコミットメントに対する揺るぎない意思を示すことも重要ながら、コアCPIが1%に近づくということがはっきりしない間は、常に追加緩和期待が出てくることにもなりかねない。

 追加緩和の期待を残すことは必要であると思うが、そのタイミング等については、緩和効果を見定めながら、物価安定の目途を達成するために、どのようなタイミングでより効果的な追加緩和策を実施しうるかが今後の大きな課題となる、といったような表現にしておかなければ、追加緩和を行わない理由がないとの理由で、会合毎に緩和期待が出ては、それが裏切られるようなことにもなりかねない。

 2月14日のバレンタイン緩和は良い意味で市場の期待を裏切った。しかし、4月27日の追加緩和は市場の期待が先行してしまい、株価や為替動向を見る限り、そのアナウンスメント効果は限られた。

 あまり期待感ばかり強めてはそれが裏切られたときの影響の方が大きくなりかねない。むしろ、強めるべきは期待感ではなく信頼感ではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2012-05-14 11:29 | 日銀 | Comments(1)
Commented by rurie at 2012-05-14 22:40 x
日銀は中国についてどう思っているのでしょうか。

他国経済が日本に与える不確実性と言う点では
5/11の中国の諸指標は、欧州危機が子供の遊びに思えるほど
日本にとって危険なシグナルを発していると思います。

欧州よりも、米国よりも、遥かに遥かに
日本は中国と結びついていて、その中国がハードランディングの
明らかな兆候を示したと思うのですが。

もし本格的に中国がクラッシュしたら
日本は中国を大幅に超える衝撃を受けると思います。

そうならないことを祈りますが・・・
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