牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

金融政策による長期金利への働きかけへの限界

 「国債などの長期金利は経済に影響を与える。しかし、FRBはほとんどもしくは直接的にはそれらに影響を与えることができない。」

 「長期金利は、現在の短期金利だけでなく、市場の先行きの短期金利予想にも影響を受ける。つまりFRBが長期金利をコントロールする力は、市場の期待に働きかける能力にかかっている。」

 これは2005年3月におけるバーナンキFRB議長による講演の一部である。さらにバーナンキ議長は、「市場の先行きの短期金利予想に最も直接的に働きかける手法は、トークである」とも語っている。

 そして、ゼロ金利下における非伝統的な金融政策の効果波及経路について、日銀の宮尾審議委員は今年3月の講演で、次のように語っている。

 「実質的なゼロ金利を将来も続ける、あるいは資産購入を増額するなどにより一段の金融緩和が実施されると、金利を通じる経路やポートフォリオ調整を通じる経路の両面から、長めの金利やリスクプレミアムの低下をもたらします。そして、それが借入コスト、株価・為替レートを含む様々な資産価格、銀行貸出などに働きかけ、企業・家計の支出に影響を及ぼして、最終的には景気・物価にプラスの効果を及ぼしていくという経路が考えられます。」

 伝統的手段である政策金利の変更、そしてゼロ金利下における非伝統的手段における金融政策の波及経路については、両者ともに長期金利の低下を促すことを目的としているようである。それにより、景気・物価に働きかけようとしている。しかも、非伝統的手段においては、FRBも日銀も国債の買入を主眼に置いており、これも当然ながら国債の需給に働きかけ、長期金利の低下を促すこととなる。

 しかし、現実に長期金利の低下がそのような効果を及ぼしているのであろうか。日本では1999年以降、2%以下の長期金利が続き、ここにきて1%を下回る状態が続いている。長きに渡り長期金利は低位安定していても、それにより景気や物価が回復してくるような兆しは見えない。

 米国の長期金利も2%を大きく割り込み、ドイツの長期金利は1.6%割れとなっている。日本に比べてまだ長期金利に低下余地はあるとはいえど、欧米でも長期金利の低下による景気や物価への影響そのものは限定的ではなかろうか。

 長期金利の低下は中央銀行の金融政策だけに影響を受けているわけではない。むしろ景気や物価の低迷が、長期金利の低下を促している面もある。また、米国債やドイツ国債、英国債などとともに日本国債は安全資産と見なされており、欧州の信用問題などが深刻化すると買われやすい側面も持っている。さらに金融機関などへの規制強化なども結果として金融機関による国債購入を促進させることも多い。このようなかたちでの長期金利の低下が、はたしてどの程度、景気や物価に影響を及ぼすと言うのであろうか。

 このあたり、バーナンキ議長の言うトークの力による効果も意識する必要があるのではなかろうか。特に為替市場などにおいては、中央銀行のトップによる言動による影響も大きいとみられる。アナウンスメント効果を最大に生かそうとしているバーナンキ議長に対し、4月27日の会見内容などからみて白川総裁による発言は、せっかくの追加緩和策の心理的な波及効果を限定的なものとしていた。中央銀行による金融政策の働きかけは、形式上は長期金利の低下を促すものかもしれないが、特にゼロ金利下にあっては、いかに市場心理に働きかけるかの方が重要ではないかと思われる。


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp




[PR]
by nihonkokusai | 2012-05-08 09:50 | 日銀 | Comments(2)
Commented by rurie at 2012-05-09 18:01 x
思うんですが日銀がアナウンスしたいのは
「日銀が最も嫌うのはデフレでもインフレでも、円高でも円安でもなく
『急激な変化』である」と言うことではないでしょうか?
日銀のインフレの目途も2014年で+0.7%と非常に緩やかですし
昨年12月の為替介入後、今年のバレンタインサプライズ後に
それをわざわざ打ち消すような発言をしているのは
一般的に考えれば非常にチグハグですが
そう考えると整合性が取れないでもないなぁ、と。

もっともそうであれば急激な円安が見込めない
日本の製造業は概ね壊滅してしまう事になりますが・・・
Commented by nihonkokusai at 2012-05-10 09:12
「物価の安定」という言葉のとおり、実際には「急激な変化」を避けるのが本来の目的だと思います。しかし、それでは甘すぎるというのが、市場や政治家の認識なのでしょうね。
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー