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日銀法改正に対するリスク

 1998年4月1日に施行された新日銀法における改定の最大の目的は、日本銀行が日本の中央銀行としての独立性を、法制度としても明確にするというものでした。

 中央銀行の設立の歴史を辿ると、インフレ的な経済運営を求める圧力をかけやすい政府から独立した組織が必要に応じて作られてきたことがわかります。日銀法改正前の日本銀行も、法制度上からは政府から独立した機関とは言いがたいものとなっていました。

 日本は戦後の経済成長により先進国の仲間入りをするとともに、世界経済への影響力が大きなものとなっていたにもかかわらず、金融という分野についてはやや出遅れていました。銀行が政府による護送船団方式の行政によって守られていた上に、間接金融というシステムが中心となっていたことで金利水準そのものが抑えられ、市場メカニズムによって金利が決定されるといった機能が限定的なものとなっていたのです。

 しかし、1980年代に入り、預貯金の金利の自由化が進むとともに、無担保コール市場が設立され、銀行による国債のディーリングが認可されるなどしてきたことで、金利の居所も次第に市場に委ねられるようになってきました。バブル崩壊によって銀行の護送船団方式というシステムが崩れ、金融システムそのものの安定も強く求められるようになってきたのです。

 金利が市場によって決定されるようになったことで、金融政策についても市場参加者との対話が重要となりました。そしてこの金利の安定には、当然ながら物価の安定といったものが必要となりました。政府の意向が強く働いてしまう中央銀行では、容易に市場からの信認を得ることはできません。政府の意向に反してでも「物価の番人」としての責任を果たすことが必要であり、そのためには法制度そのものを改定する必要もあったのです。  こうしたことを背景に、新日銀法は制定されたのです。

金融政策の独立性を維持するためには、その業務運営についても自主性が与えられていることが極めて重要な点となります。日本銀行がその金融政策運営において、独立性を重視するならば、国民の支持や市場の信認を得るために、金融政策の決定内容や決定過程の「透明性」が求められます。このため、新日銀法の大きな理念としては「独立性」とともに、それを支えるべき「透明性」の向上が求められています。

 金融政策決定会合の内容についても、議事要旨を作成し速やかに公表し、さらに議事録についても10年経過後に公表していくことになっています。

 また、国会から求められた場合には総裁などが出席して答弁しなければならないことが制度化され、政策委員も金融政策に関しての説明などを含めて、積極的に講演などの活動を行うようになっています。

 さて、現在、この日銀法に対しての改正論議が盛んです。しかし、そもそも1998年の新日銀法が必要になったのは、先進国の中央銀行の潮流に乗り遅れまいとしての動きでした。日銀法に対しての改正要求は、この中央銀行の独立性を脅かすものであり、その動きに対して歴史とともに中央銀行制度を確立してきた欧米からは、冷ややかな目というよりも、非常にリスクのある行為と受け止められてもいたしかたがありません。


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by nihonkokusai | 2012-05-05 15:24 | 日銀 | Comments(0)
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