バーナンキFRB議長による日本のデフレへの言及
バーナンキFRB議長は、FOMC後の記者会見において、「必要なら一段の緩和の用意はできている」とし、追加緩和の可能性が残っていることを示した。
さらに今回の記者会見では、日本のデフレに関するコメントが出たようで、この内容が興味深い。今回は日経新聞のサイトに掲載されたFRB議長の記者会見の訳文を元に、日本に関するバーナンキ議長の発言を中心にみてみたい。
「日銀の政策について15年前に私が示した見解は現在の自分の見解と異なるとの批判を受けるがそれはまったく間違いだ。今の金融政策は15年前に示した見解と首尾一貫している」
これについては、かなり疑問が残る。1月25日のFOMCのゴール設定の際に、これが昔、バーナンキ教授が主張していたようなインフレ・ターゲットの導入ではないことを、バーナンキ議長は強調していたと思うのだが。
「確固たる意思を持つ中央銀行はデフレをなくすための政策を実施する必要があるということ、短期金利がゼロになっても中央銀行は金融緩和を実施できるということだ」と議長は言うが、その手段として「デフレ克服のためにはヘリコプターからお札をばらまけばよい」と発言が過去にあった。また「物価がデフレ前の水準に戻るまでお札を刷り続け、さらに日銀が国債を大量に買い上げ」れば、確かに物価は上昇するであろうが、FRB議長となり米国の財政政策にも注文を付ける立場にいて、この意見は現在でも変わっていないのか、財政ファイナンスを中銀が行っても良いのかと、あらためて問いたいところである。
米国では物価の下落が起きずにデフレを誘発しなかったのは、量的緩和によるバランスシートによる適格な金融政策によるものと、自負しているが、日本では雇用体系が大きく変化するなどの要因も重なり、デフレを招いたとの指摘もある。このあたり、15年前の日本と2010年以降の米国の、金融政策と物価の関わりについて、状況の違いをあらためて分析する必要もあるのではなかろうか。
そして、バーナンキ議長は米国がデフレを免れることができたことについて、米国の対処が良かった点は、銀行への資本注入を非常にすばやく実施したことをあげている。これについてもバブル崩壊後の日本の対応の遅れなどを、かなり参考にしたはずである。ただし、銀行への資本注入は中央銀行の問題ではなく政治の問題である。当時の宮沢喜一首相が公的資金注入に躊躇したのは、世論の反対によるものであった、この遅れがさらなる金融システム不安を招く結果となったのは確かであろう。
どうも今回のバーナンキ議長の会見を見てみると、日本と違いデフレを招かなかったことをあえて強調しているようにも見える。現在の日銀の金融政策について直接言及しているわけではないが、かなり意識している可能性もある。今回の日本を意識したコメントを見る限り、バーナンキ議長も27日に日銀が何をしてくるのか、かなり関心を持っているのかもしれない。
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