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日銀への政治介入のリスク

 4月11日の毎日新聞の社説は、「日銀への政治介入 信用落とす愚行やめよ」と題するものであった。この社説の内容に対して、ツイッターなどでは共感できるとのツイートが多くみられたが、私も同様であった。

 先日の私が書いたコラム「危ない橋を渡った日銀(4月9日の牛熊ブログ)」では、「2・14のバレンタイン緩和をきっかけに、今後、日銀への政府の関与を強めてしまうようなことになれば、日銀の信頼が揺るぐ懸念もあろう。」としたが、現実に政府関与を強めそうな動きがみられている。

 毎日の社説や私のコラムでも指摘していたが、まずひとつに日銀の審議委員人事に関する問題がある。毎日の社説では次のような指摘があった。

 「金融政策のスタンスがほとんど知られていない候補もいたが、特に問題になることもなかった。本人に直接考えを問う仕組みもなく適不適を判断すること自体、公正さを欠くが、河野氏の場合は、消費増税に積極的で日銀の追加金融緩和に消極的とみなされたことが、反対の主な理由の一つとなったようだ。そうだとすれば、政府は今後、追加緩和に前向きと受けとられる人材を選ばねばならなくなるだろう」

 日銀の審議委員に求められるのは、日銀法によれば「経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者」であり、追加金融緩和に積極的な人材でなければならないとは書かれていない。河野龍太郎氏は経済又は金融に関して高い識見を有する者としては十分に該当するはずであり、それに反対することはおかしい。

 毎日の社説では、「中央銀行の政策が効果を生むには、市場参加者を含む経済のプレーヤーが中央銀行を信頼していることが何よりも前提となる。政治家の意向に沿いそうな人材で中枢を固めた組織に信頼が集まるだろうか。」とコメントしている。

 自民党が本格化させている日銀法改正の協議についても次のような懸念を示している。

 「政府が定めたインフレ率を日銀に目標として課し、大幅な未達となった場合には、総裁や副総裁、さらに審議委員まで内閣が解任できるようにするという。両院の同意が条件とはいえ、そうした条文の存在そのものが大きな政治圧力となりうる。」

 この社説では触れていなかったが、物価目標の達成を目的として、為替の売買を日銀が実施できるようにすることも日銀法改正案原案に含まれており、円高の責任も日銀に負わせようとしており、これも大きなリスクが伴う。

 「物価にとらわれ過ぎた金融政策は、資産バブルに対応しそびれる恐れがある、というのが金融危機の教訓だ。強制力の強いインフレ目標は時代の流れに逆行する。」

 この指摘もその通りかと思う。現在の日欧米の中央銀行はあくまで中長期的な物価安定を目標とし、そこに強制力はほとんど働かない。それが時代の流れであるのに、日本のこのような政治的な圧力は、世界の金融の歴史の流れに完全に逆行する格好になる。

 「政治家にとって、国民に不人気な政策を実行するより、中央銀行に責任を押し付ける方がはるかに楽である。だがその誘惑に負けた時どうなるか。国民に選ばれた代表なら、もう一度、問い直してほしい。」と社説では最後に問うている。

 デフレを起こしたのは、そもそも日銀の金融政策によるものであったのか。もちろん日銀が何もしないのもおかしいが、政治が日銀に丸投げしようとしていることも責任放棄と言わざるを得ない。また、中央銀行がなぜ政府と独立した組織となっているのか。そのあたりの歴史を政治家はあらためて見直す必要がある。そうでなければ、日銀への信認そのものが毀損し、取り返しの付かない事態に発展する懸念もありうるのである。


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by nihonkokusai | 2012-04-13 10:06 | 日銀 | Comments(2)
Commented by ランチ at 2012-04-13 15:50 x
はじめまして。「日銀法改正しても大丈夫」と政治家は言ってるのですが「原発事故は起こらないから大丈夫」と同じ感じがして怖いです。まして震災対応ですらままならず、未だに政局争いをしてる今の政治家達にいざ想定外の事態が起きれば対処できるはずはないと思うのですが。もし改正するのなら全責任を政治家がとるようにすべきだと思います。原発事故もなぜか電力会社だけが悪いみたいな感じで、すべての責任を日銀に押し付けるのではないかと心配してます。
Commented by nihonkokusai at 2012-04-13 16:05
ご指摘のとおりかと思います。なんでも日銀に責任を押しつけ、その結果責任も取る気がないのなら、少なくとも日銀批判などは控え、本来の政治家としての職務を全うしてもらいたいものです。
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