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自民党の日銀法改正案について

 自民党は4月4日の午前の財務金融部会で、日銀法改正案原案を公表した。この原案では、物価目標を政府が定め、物価目標にその達成時期も明記し、実現できなかった際は、政府が日銀に説明を求めることができるようにするとともに、衆参両院の同意があれば総裁ら執行部を解任する権限も持たせた。物価目標の達成を目的として、為替の売買を日銀が実施できるようにすることも示したそうである。

 本当に自民党全体がこのような意見を支持しているのかどうかはわからないものの、中村清次日銀審議委員の後任人事に関し、河野龍太郎氏を起用する人事案に対し自民党は反対するそうであるが、このあたりの動きを見ても、どうやら日銀に対する緩和要求圧力が自民党内では強いようである。

 自民党の日銀法改正案原案は、報道内容を見る限りにおいて、世界で最初にインフレ目標政策を採用したニュージーランドの方式を念頭に置いているようである。

 ニュージーランドは1989年にインフレ目標政策を採用した。新しいニュージーランド準備銀行法では、大蔵大臣と準備銀行総裁は、政策目標に関する合意(PTA)を設定し、インフレ目標等を明文化した。政策運営のパフォーマンスについては、総裁が責任を負うこととされ、インフレ目標が達成出来ない場合、法律上は総裁罷免のペナルティーが科せられることもあり得ることとなっている(以上、「ポスト・マネタリズムの金融政策」より一部引用)。  ただし、ニュージーランドでは、新法が施行されたあと目標が達成できなかったとして総裁が罷免されたケースはない。このほかインフレ目標政策を採用しているカナダや英国では、これほどの縛りは設けていない。今回の自民党案では総裁のみならず、副総裁も解任できるとするなど、日銀を政府の管理下に押さえ込もうとの意識すら見え隠れする。特に為替介入の権限を財務省から日銀に移行させようとするのも、スイス中銀のような政策を意識したものかもしれないが、つまりは円高の責任もすべて日銀に押しつけようとしていると見えなくもない。

 本来、インフレ・ターゲット論者であったバーナンキ教授であるが、FRB議長となり、現場に出てからは持論を完全に封印した。今年1月のFOMCでFRBは物価に対して特定の長期的な目標を置いたが、これはインフレ目標政策ではないと議長は指摘している。これはつまり、機械的なインフレ・ターゲット政策はかなりのリスクを孕んでいるものであることを認識したことで、機械的なインフレ・ターゲットという持論を政策に結びつけたような印象を与えたくなかったのではなかろうか。

 日銀もこのFRBに追随し、2月14日に実質的なインフレ目標政策を行うこととなった。これはこれまでインフレ目標政策を採用していなかったとされる日米中銀が大きな政策変更を行ったかに見える。しかし、実際のところはすでにインフレ目標政策を採用している国と同様に、あくまで中長期的な物価目標を定め、それに向かって金融政策を行うものであり、それに付随するリスクにも目配りし、機械的に物価を操作しようとするものではないという政策である。

 しかし、この自民党案の内容は、リスクには目をつぶり、政府が定めた物価目標を達成するため、為替介入などを含めて、積極的に行わって結果を出さなければ、総裁を首にするのも厭わないというものであろう。そのぐらいしなければ日本のデフレ脱却は不可能と見ているのかもしれないが、これはこれで大きなリスクを孕むことにもなる。物は試し、でも良いのかもしれないが、もしこのような日銀法改正が行われたとなれば、デフレ脱却などよりもインフレへの警戒を強める必要がありそうである。


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by nihonkokusai | 2012-04-06 09:39 | 日銀 | Comments(0)
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