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積極的な金融政策の効果と限界

 白川日銀総裁の「Federal Reserve Board と International Journal of Central Bankingによる共催コンファレンス」での講演内容が日銀のサイトにアップされた。今回はこの中から、「積極的な金融政策の効果と限界」に関する部分を見てみたい。

 白川総裁は金融危機後の積極的な金融政策による副作用や限界に関し、十分な注意が払われていなかった側面として4点、指摘している。

 第1にあげたのは「バランスシート修復の重み」である。「金融緩和はバランスシート修復に伴う痛みの緩和剤でしかない。しかも、この緩和剤は長く服用すれば、過剰債務の削減インセンティブを低下させ、最終的に必要なバランスシート修復の達成時期の遅れというコストを伴う側面もある」と総裁は指摘している。

 日銀は1999年2月にゼロ金利政策を行い、2000年8月にいったん解除したものの、2001年3月に量的緩和政策を実施。これも2006年3月に解除され、2007年2月に政策金利を0.5%まで引き上げたが、2008年にはそれは0.1%まで引き下げられ、2010年10月に包括緩和策として実質的なゼロ金利政策を再開した。つまり一時的に政策金利が少しだけ上昇した時期はあれど、1999年から現在に至るまで、政策金利はほぼゼロに近い水準で推移し続けたことになる。

 総裁は「もちろん、低金利の効果はバランスシートの毀損していない経済主体にも及ぶ」としているが、これは日本経済全体にもかなり影響を与えているはずである。つまり、超低金利に適応した経済となってしまっており、それは今後、もし仮に物価が上昇した際には大きな影響をもたらす可能性を秘めている。さらに総裁は過剰債務の削減インセンティブの低下についても指摘していた。

 第2として「金融緩和によって誘発される需要が、異例の低金利下によってのみ採算が合う投資案件である場合には、資源配分が非効率になり、経済全体の生産性や潜在成長率への悪影響も無視できなくなる」点をあげている。低金利の継続が経済全体の生産性に影響を与え、潜在成長率を下押しするリスクも認識しておく必要はあろう。

 第3として金融仲介機能への影響をあげており、「中央銀行の行う金融政策と支出を行う企業や家計との間には、両者を繋ぐ銀行や金融市場が存在し、これらの仲介機関が適切に機能しなくなると、金融緩和の効果も期待できなくなる。」としている、緩和度合いがある臨界点を超えると、逆に利鞘の低下をもたらし、金融仲介機能も弱まり得るとの指摘は、現在の日本の状況そのものではなかろうか。

 第4としてあげているのが、金融緩和の国際的波及と自国経済へのフィードバック効果で「自国経済がバランスシート調整下にある場合、金融緩和は自国の民間経済主体の支出増加を促すというより、グローバル投資家の利回り追求や為替レートの減価圧力を通じて効果を発揮する傾向が強まる。」と指摘している。つまり国際商品市況の不安定化や、通貨安競争を生むことになる。今年2月、日銀は実質的なインフレ目標政策を導入し、追加緩和も実施したが、これには円高調整の後押しも意識されていたものと推測される。つまりは、金融緩和の国際的波及による自国経済へのフィードバック効果がひとつの狙いであったのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2012-03-28 09:29 | 日銀 | Comments(0)
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