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日銀が実質的なインフレ目標を導入した理由

 2月13日から14日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が発表された。この会合では、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として「中長期的な物価安定の目途」を示すことにすることを決定した。日銀はこれより、デフレ脱却に向けてより能動的に対処する姿勢を強めるなど、2月14日は日銀の金融政策が大きく変わったが、何故にこのタイミングであったのか。それについては、議事要旨で次のような記述があった。

 「当面の金融政策運営を検討するに当たって、委員は、金融政策運営に関する情報発信については、かねてから、より良いあり方を模索する不断の検討が必要との認識が委員間で共有されてきたこと、そうした中、前回会合では、米国FRBにおいて情報発信のあり方を巡る検討が進められていることを踏まえ、何人かの委員から改めて、中長期的な 物価安定の理解や、それに基づく時間軸の示し方について、検討していく必要があるとの問題提起があったこと、実際に 、米国FRBが物価安定に関する長期的な目標(longer-run goal)を示したことを契機に、中央銀行の物価安定に対する姿勢について関心が改めて高まっていること、等を踏まえ、金融政策運営に関する情報発信のあり方について議論することにした。」

 1月23日・24日の議事要旨を確認してみると、確かに次のような記述があった。つまり1月25日のFOMCでの情報発信の方法をかなり注視していたことが伺える。

 「何人かの委員は、こうした時間軸の示し方は、現下の日本経済の情勢等を踏まえると、金融政策の透明性や有効性の観点から適切であるが、米国FRBがコミュニケーション政策を見直していることもあり、情報発信のあり方については不断に点検を続けていくことが重要であると付け加えた」

 1月25日のFOMCでは「長期目標と政策戦略」という声明文において、FRBは物価に対して特定の長期的な目標(goal)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%とした。これについてバーナンキFRB議長は、数値目標に縛られるようなインフレ・ターゲットとは異なるとの見解を示していたが、大枠としてはいわゆるインフレ目標政策を導入したということになろう。

 このFRBの動きが要因となり、日銀も同じ方向に舵をきることを2月14日に決定したものと思われる。この背景には政治からの緩和圧力が以前にも増して強まっていたことや、円安・株高の動きに対してさらなる押し上げ効果も意識されたのではないかと予想される。

 日銀の目指すべき物価上昇率については、政策委員の間からはいろいろと意見も出たようで、複数の委員からは、「1~2%」という表現にしてはどうかとの意見があったり、長期的には主要国の多くと共通の物価上昇率を目指す必要があり、現状、それは「2%」であるとの意見も出ていた。日本の現状を踏まえれば1%程度までの上昇もかなり厳しい状況にあることで、「当面」としては1%とし、 より長い目でみて「2%以下のプラスの領域にある」と幅を持って表現したことは適切であったかと思う。

 そしてその目標については、「中長期的な物価安定の目途」と呼ぶとし、 その英語表 現については 「The Price Stability Goal in the Medium to Long Term」とすること が相応しいとの認識を共有したと、記事要旨にはわざわざ記されている。英語表現まで強調するあたり、FRBの政策変更を日銀がかなり意識していたことが伺える。

 ただし、FRBとの差別化を図ることとともに、日銀のデフレ脱却に向けた能動的な姿勢への変化を印象づけるため、日銀は基金の増額も行った。それについは以下の記述が議事要旨にあった。

 「資産買入等の基金について、大方の委員は、日本銀行の政策姿勢の明確化を行動で裏付ける観点から、10兆円程度という思い切った規模の増額を行うことが適当との見解を示した。」

 日銀は実質的な政策変更の明確化を行動で示し、これは結局、市場にもインパクトを与えることになり、その後の円安・株高を加速させることになったのである。


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by nihonkokusai | 2012-03-21 11:44 | 日銀 | Comments(0)
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