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国債が売られた理由

 昔、こんな文章を書いたことがあった。

 「上がったものは下がるし、下がったものは上がるというのが相場である。・・・価格という面から見れば、バブル期の株のように国債の価格は上昇を続けている。この国債相場に対して懸念する声も強い。また国債の価格の上昇による売買益などは無視して、国債が急落したらどれだけ損失が発生するのかといった見方しかできないようにすら思える記事なども見受けられる。1%金利が上昇したら銀行保有の国債はどれだけ損失が発生するのか計算するのは簡単である。しかし、それ以前に1%金利が上昇するという根拠を述べてほしい。買われたものは確かにいずれは売られる。上がったものは下がる。けれど、上がるには上がるだけの理由がある。」

 これを書いたのが2003年6月4日である。私は「債券ディーリングルーム」というホームページの更新を1996年あたりから続けており、ほぼ毎営業日更新している。過去のものもコラムや市況などはほぼすべてそのまま置いてあり、いつでも閲覧が可能となっている。上記の文章もそこからコピー・ペーストしたものである。

 2003年6月に何か起きたのか。ある程度ベテランの市場参加者であれば、ピンとくると思う。この文章を書いたときの長期金利は0.5%を割り込んでいた。数日後の6月11日に日本の長期金利は0.430%まで低下して、日本というか世界の歴史の上でもたぶん最低の長期金利を記録したのである。しかしその後、債券相場はその反動が来る。これはのちにVARショックとも呼ばれた。そして、実際に長期金利は「1%」も上昇することとなる。

 そして、2012年3月12日にこのコラムで、「円安株高となっても債券が売られない理由」とするものを書いた。そこでは私はこんな指摘をしていた。

 「金利を低位で抑え、積極的な資金供給とともにデフレ脱却に向けてこれまで以上に能動的な姿勢を見せてきた日銀に対し、市場はそれを好感し円安や株高の動きを加速させた。この日銀の動きは当面、金利の抑制圧力となり、実際にデフレ脱却の目処が見えるようにならなければ、長期金利そのものは上昇することは考えづらい。つまり現状の円安株高、そして長期金利の低位安定という状況がこれにより生まれている。」

 これについては、円高・株安というトレンドが大きく変化したにもかかわらず、すぐには債券のトレンドが変化しなかったのかという理由にはなっていると思う。

 「もしデフレ脱却が見える前に債券が大きく売られる、つまり長期金利が上昇してくるとなれば、それは日銀の金融政策やファンダメンタルズとは別な要因が働いた場合となろう。何かしらの需給要因、もしくは何かしらのリスクプレミアムがオンされるような場合が想定される。そういった動きは現状、見出せず、当面の債券相場は高値圏でのもみ合い小動きが続くことが予想される。」

 しかし、この文章については反省すべき点がある。およそ9年前と同じように、本来であれば高所恐怖症になっていてしかるべきところが、あまりに長期間低いボラティリティの中での高値安定相場に慣れしてしまい、そのターニングポイントが実は近づきつつあったことを見逃してしまっていた。

 「当面の債券相場は高値圏でのもみ合い」は続かずに、日本の債券相場は3月13日から14日にかけて大幅に下落した。13日に0.965%まで低下していた長期金利は15日には1.060%まで上昇し、債券先物も13日に142円69銭まで買われたが、16日には140円99銭まで下落したのである。

 今回のこの債券相場の変動の背景には、VARショック時と同様に長期間にわたり低いボラティリティの中、相場が高値圏で安定し続けていたことの反動が大きかったと思われる。それが何故、14日以降に起きたのかといえば、日米の中央銀行の金融政策がひとつのきっかけになったと予想される。

 日本では12日から13日にかけて日銀の金融政策決定会合が開催された。2月14日に追加緩和があったことで、その効果を見定めたいとして現状維持との見方は強かったものの、一部には追加緩和期待もあった。このため、まずはこの結果を見定めたいという市場参加者も多かったものと思われる。

 さらに米国では13日にFOMCが開催された。こちらも予想されたように現状維持となったが、声明で景気認識を前回からやや引き上げ、金融市場の緊張が緩和している、との見解が示された。つまりこちらも一部にあったQE3への期待が大きく後退した。これをきっかけに米債は大きく下落し、この米債安を受けて14日に日本の債券市場も急落したのである。

 つまり14日から15日にかけての日本の債券市場の急落は、金融政策への期待感の後退をきっかけとして、これまでの相場の反動といった面が大きいとみられ、2003年6月の暴落のミニ版とも言えるのではなかろうか。ただし、2003年のように長期金利が1%も上昇するようなことは考えづらい。消費増税の行方など気になる要因はあるものの、いまのところ何かしらのリスクプレミアムがオンされているわけでもない。ある程度調整が入れば、別な要因が出ない限り、いずれかのタイミングで下げ止まるものと予想される。

 相場の読みは難しい。そして、相場にはいくつもの格言も存在する。その中に「もうはまだなり、まだはもうなり」というものがある。今回は「まだはもうなり」というのが当てはまりそうな債券相場であった。


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by nihonkokusai | 2012-03-17 11:26 | 債券市場 | Comments(0)
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