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西村日銀副総裁によるボルカー・ルールに関する発言より

 日銀の西村副総裁がワシントンで行った講演の内容が日銀のサイトにアップされた。この中でボルカー・ルールについてのコメントがあった。

 ボルカー・ルールとは、2010年7月に米国で成立した米金融改革法(ドッド・フランク法)の柱となるルールのことである。施行は今年7月の予定となっている。これは1933年銀行法、いわゆるグラス・スティーガル法に比肩する包括的な金融規制改革とも評されている。

 これについて西村副総裁は、ボルカー・ルールの背景にある基本的な考え方については、大いに賛同しているとしているが、下記の注意点を指摘している。

 「ユーロ圏危機が続く下では、各国の政策当局者は新たなルールを導入する際、これがもたらし得る意図せざる影響については、特に現在の局面において海外ソブリン債市場に及ぼす影響という側面からも、十分に注意することが求められます。加えて、中央銀行にとって、ソブリン債市場は金融政策の主要なトランスミッション・メカニズムの中核であり、その流動性の問題には留意することが求められます。 」

 つまりはこの規制により、ソブリン債、つまりは国債などの流動性に影響を与える可能性への影響を指摘し、それはつまり国債が中央銀行の金融政策の中核的な役割を担っているため、こちらにも影響を与えかねないと指摘している。

 ボルカー・ルールは「銀行による、短期の利得獲得を狙った自己勘定でのトレーディングを制限することを狙い」としているが、「どのように関連規則が書かれ、どのように運用されるかによって、このルールは、マーケットメイク活動や市場流動性に重大な影響を及ぼし得ます。」と西村副総裁は危惧している。

 「現時点での規制案によれば、米国債および多くの米国エージェンシー債はこのルールの適用から除外されています。このことは、明らかに米国当局が、これらの債券の円滑な取引の確保、およびそのためのマーケットメイク活動の重要性を、十分認識しておられることを示しているように思います。」

 これはつまり、このルールの規制案で米国債を除外したのは、国債の流動性等が非常に重要なものであり、それに支障が出ると金融システムそのものにも影響を与えかねないためであろう。

 「市場の流動性は、言うまでもなく、米国債以外の国債にとっても重要です。しかしながら、現状の規制案は、日本やカナダ、欧州諸国などの国債は適用除外としていません。したがって、仮にボルカー・ルールが字句通り厳格に施行されれば、海外ソブリン債市場の流動性を損なう可能性もあると考えられます。」

 もし日本国債も除外されなければ、日本国債を保有する米国の金融機関に影響を与えかねず、それは日本の国債市場にも大きな影響を与えかねない。これは日本だけでなく、カナダや欧州諸国も同じ危惧を抱いていると思われる。

 もう一つの問題として、西村副総裁は短期の為替スワップへの規制の可能性についても次のように危惧している。

 「短期の為替スワップが、現状の規制案ではボルカー・ルールの適用対象となり得ることも挙げられます。このことは、為替スワップを通じた金融機関の外貨流動性調達が、より困難となるリスクを孕んでいます。このことも、とりわけ外貨流動性の調達環境が世界的にタイト化している状況では、多くの金融機関にとっての関心事となり得ます。 」

 西村総裁は「市場参加者の一部は、ボルカー・ルールがどのようにソブリン債市場や資金調達環境に影響を及ぼすのかについて、不確実性を払拭しきれていないように伺われます。」とコメントしているが、市場にとってこれはかなりの不安材料にもなりかねない。

 「とりわけ、欧州ソブリン債市場の緊張が高まっている中、ドッド=フランク法の施行が、海外のソブリン債市場や金融機関の資金調達に及ぼす影響を、十分慎重に見極めることが重要です。」(西村日銀副総裁)

 日本だけでなくカナダや欧州にも大きな影響を及ぼしかねないことから、適用除外の対象を日本国債などにも拡大することが求められる。ただし、もし拡大されるとしても、その適用対象のラインをどこにするのかといった問題も残り、今後の行方についても注目しておく必要がありそうである。


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by nihonkokusai | 2012-03-08 09:58 | 国債 | Comments(0)
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