牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

物価に対する理解・目途・目標の違い

 2月17日の白川日銀総裁の講演内容から、あらためて物価に対する「理解」と「目途」、「目標」の違いについて探ってみたい。

 各国中銀の各国の中央銀行の物価安定の数値表現については、イングランド銀行は目標(target)」、欧州中央銀行やスイス国民銀行は定義(definition)、FRBはこれまで採用していた物価の長期的な見通し(longer-run projection)を、1月25日に長期的な目標(longer-run goal)に変更している。そして日銀はこれまでの物価安定の理解(understanding)から物価安定の目処(goal)に変更している。

 日銀の言う「理解」とは、物価が安定していると各政策委員が理解している物価上昇率を個別に提示し、それらを包含する範囲での数値表現、つまり各委員の見解の集合体という位置づけと、総裁は説明しているが、これは「固定的なイメージ」の強い「インフレ目標」とは一線を画すために、このような表現にしたのではないかと、私は推測している。

 ところがFRBが1月25日にインフレ目標に近いかたちを示したことで、日銀もさらに踏み込んだ対応を行うことを検討したと思われる。ちなみにFRBが長期的な目標設定を発表する直前に開催された日銀の金融政策決定会合では次のような発言があったことが、議事要旨(1月23日・24日)に記されていた。

 「政策金利を巡る時間軸について、委員は、中長期的な物価安定の理解に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していくとの方針を、これまで以上に粘り強く対外的に説明していくことがきわめて重要との認識を共有した。何人かの委員は、こうした時間軸の示し方は、現下の日本経済の情勢等を踏まえると、金融政策の透明性や有効性の観点から適切であるが、米国FRBがコミュニケーション政策を見直していることもあり、情報発信のあり方については不断に点検を続けていくことが重要であると付け加えた」

 「これまで以上に粘り強く対外的に説明していく」、「情報発信のあり方については不断に点検を続けていく」との発言は、2月14日の会合での理解を目処に変更したことに繋がっていったものと推測される。

 そして中長期的な物価安定の目途について、これまでの理解との違いを白川総裁は講演で説明している。第1として今回の「目途」は「各政策委員の見解」ではなく、「日本銀行としての判断」であるということを指摘している。そして第2として、物価安定の領域として「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラス」としたうえで、「当面は1%を目途とする」ことを明確にしたとする。

 それではなぜ「目標」あるいは「ターゲット」という表現を使わなかったのかという点について総裁は、「今回の目途は、中央銀行の使命と整合的な物価上昇率を数値的に示し、それを中長期的に目指していくという点では、ターゲットという表現を使っている国の中央銀行と、考え方そのものに大きな違いはありません。しかし、わが国では、インフレ目標という言葉が、一定の物価上昇率と関係づけて機械的に金融政策を運営することと同義に使われることも未だ多いように思われます」

 つまり、1%という目途というか目標を設定した以上、それを達成するために無理矢理物価上昇を促すような政策を取るというのではなく、中長期的にみた物価や経済の安定を重視して行われる政策が重要であるとしている。

 その上で、「そうした金融政策運営の実態にもっとも相応しい日本語の言葉は、中長期的な物価安定の目途であると判断しました。」とある。しかし、本当に「目処」という表現で良かったのかどうか。私は、あまりぱっとしない表現と感じてしまったのだが。ただし、ゴールという英語の表現は使いづらく、また目標とすると機械的なインタゲとも捉えられかねず、「固定的なイメージ」も強い。このため、目処という言葉の選択は、苦肉の策というか苦肉の表現であったと推測される。

 いずれにせよ、昔、バーナンキ教授が主張していた「固定的なイメージ」に近いインフレのターゲットと、今回、FRBや日銀が採用したインフレのゴールとはやはり別物であるとの認識であろう。ただし、インフレ目標の定義そのものが、物価上昇(インフレ)率の目標値(または範囲)を設定・公表して、その達成に向けて中央銀行が「金融政策運営を実施する」という金融政策の「枠組み」とするならば、まさにFRBも日銀も実質的なインフレ目標を設定したと言えよう。


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。
http://www.mag2.com/m/0001185491.html

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp




[PR]
by nihonkokusai | 2012-02-24 09:46 | 日銀 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー