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日本国債は大丈夫か

 「日本国債は大丈夫か」、という題で話しをさせていただくことになった。大丈夫なのかどうか、自分なりの意見をまとめてみた。

 2002年9月の日本の10年国債入札で初の札割れが発生したその日、拙著「日本国債は危なくない」(文春新書、現在絶版)が発売された。 この本では、実はどこにも日本国債は危なくない、との表現はなく、編集者が内容を吟味し最終的に付けたタイトルであったが、あとで振り返れば、2002年当時は実際に日本国債は危ないという状況にはなかった。

 日本国債を消化するだけの資金が十分に国内に存在していたためである。需給への懸念以外には、日本国債を売るような要因はなかった。デフレや日銀による量的緩和政策など、むしろ国債を買う材料の方が多かった。 2002年9月の10年国債の札割れは、買い手が引いてしまったというよりも、日銀による金融機関の株式購入や、通常はないはずの金曜日の入札といった条件が重なってしまった結果であった。だから、このときの国債相場の下落は一時的であり、すぐに値を戻している。

 1990年代では経済対策のための公共事業などが歳出の増加要因となっていたが、2000年代あたりからは社会保障費が急激に増加したことが影響した。それに加え景気の悪化や減税による税収の落ち込みにより、その後も国債の大量発行は続くことになる。

 この場合の国債発行とは、新規国債の発行を示す。大量に発行される新規の国債を購入できるだけの余裕資金が国内に存在すれば需給面では問題はない。

 ただし、国債を買い支えてきていた生損保や年金、さらにゆうちょ銀行などの国債保有額は頭打ちになってきた。しかし、それをカバーしてきたのが銀行であり、預金増に対して融資が伸びず、その分国債に資金が向かうことになる。当初は個人の預金増などが影響していたと思うが、ここ数年では企業による預金の増額分がかなり国債をカバーしている。さらに最近では、海外投資家による日本国債の保有が増加するなどしており、いまのところ国債需給に問題はない。

 1998年末の資金運用部ショックをきっかけに、財務省と市場参加者との意思疎通が図られるなど国債管理政策が進められた結果、毎年度の国債増発に関しても相場への影響は極めて小さくなっている。

 それでは本当に日本国債は大丈夫なのかと問われれば、大きなリスクを孕んでいると答えざるを得ない。そのリスクについて考えさせられたのが、2010年からのギリシャを発端とする欧州の信用不安である。

 これは何かしらのきっかけで、国債の信用が失われ、それが利回り上昇を招き、その結果、あらたな国債発行を困難にし、政府の資金繰りを悪化させ、さらに金融機関にも影響を与え、問題を深刻化させる事態を見せつけられた。

 これはユーロというシステムに内在する問題とは片付けられない。ギリシャの問題も財政赤字を操作していたというきっかけで信用が失われ、それがポルトガルやスペインを経由し、イタリア、さらにフランスまで及んだ。これには格付け会社による格下げが、火に油を注ぐことになったが国債の信用が毀損し、国債の利回りが上昇することで、何か起きるのかを我々に見せてくれたのである。

 つまり、日本国債も今回のギリシャというよりもイタリアのような金利上昇が起きる可能性がある。その要因となりそうなのものに、経常収支の黒字の減少がある。貯蓄率の低下等を含めて、国内の資金が日本国債がいずれカバー仕切れなくなるであろうとの観測である。国内の個人の金融資産は無尽蔵にあるわけではなく1500兆円程度である。国債の残高が増えなければ問題はないものの、毎年度40兆円を超す新規の国債が発行され、それはまだこれからも続くことが予想される。単純にあと10年で400~500兆円の新規国債が発行されるとしてそれを消化するだけの国内資金があるのかどうか。金融機関もすべての資金を国債に振り向けることはできない。

 むしろ、国内で消化が難しくなるであるとの予想だけでも相場は先んじて動く。大手銀行なども、いまそこにあるリスクではないものの、将来のリスクはかなり気にしていることも確かであろう。

 それではその懸念により、国債に売り圧力がかかった場合に何が起きるのか。巨額の資金を国債以外に振り向け先はなく、日本国債が売られることはないと考えるのは早計である。他人よりも早くそのリスクを回避すべきとばかり、流動性の大きい債券先物などに大量売りがもしも国内大手銀行などから持ち込まれれば、それだけで市場は動揺し、長期金利は跳ね上がる。そして、その長期金利の上昇が、2%という大きな節目を突破したとき、その動揺はさらに広がる。 2%の節目を突破した際に利回り上昇ピッチが早まり、4~5%近辺に跳ね上がる可能性がある。

 日本国債の場合に発行額が余りに大きいため、1%の利回り上昇による影響は非常に大きくなる。利払費用の増加によりさらに財政を悪化させ、大量に日本国債を保有する金融機関にダメージを与える。

 このような懸念が存在する以上、日本国債は絶対に大丈夫と言うことはできない。ただし、いつ、何をきっかけに日本国債の利回り、つまり長期金利が跳ね上がるのかは予想が難しい。

 そのようなリスクを押さえ込むこともできなくはない。まずは膨れあがる債務の増加を抑える必要がある。そのためには現在、欧州各国が取り組んでいるような財政再建を行う必要がある。そうしなければ、現在、ギリシャが行っているような財政緊縮策が求められることになる。ただし、日本の場合あまりに債務が大きすぎて、IMFなどは口は出しても金は出せないことになろう。


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by nihonkokusai | 2012-02-12 09:05 | 国債 | Comments(1)
Commented by 大食漢になってみたい at 2012-02-12 12:50 x
連鎖反応でしょうか?
金利が1%上昇する度に国債に疑念を抱く人の数は増え、さらなる売り圧力に。他のマーケットにも波及し、金融機関の株なども売られるのでは?そして信用危機?
政府に信用がなかったり、財政が劣悪だと起こりうるのでしょうね。
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