相場が変化する兆候を見逃すな
自分の債券ディーラー時代の経験での中でも、そのような兆候らしきものを感じたケースは過去にいくつかあった。たとえばそれは1989年の年末にかけての株式市場の上昇であった。この動きに対し非常に違和感を覚えた。日経平均株価の1989年の大納会の引け値は、38915円と4万円に迫り、これが過去最高値となった。これは結果論で言っているのであろうと言われるかもしれないが、私に限らず債券市場関係者はこの株高を非常に冷めた目で見ていたはずである。日銀による公定歩合の度重なる引き上げを受け、債券相場は1989年にはすでに伸び悩みの状態となっていたためである。つまり、日銀の利上げに無反応な株式市場に違和感を覚えていたのである。
そして、1998年末の運用部ショックの際にも、兆候というかきっかけがあった。1998年11月20日の日経新聞に「大蔵省は1998年度の第3次補正予算で、新規発行する国債12兆5千億円のうち、10兆円以上を市中消化する方針」といった本当に小さな囲み記事が、その後の国債急落の兆候、もしくはきっかけとなったと私は思っている。当時は現在よりも不透明感も強く、その分、情報が小出しされたことで、むしろ不安感が増幅しその後の急落を招いた可能性もある。
2003年4月の7607円がバブル崩壊後の安値となり、その後上昇基調を強めた東京株式市場であったが、このときには「りそな銀行」への約2兆円の資本注入が大きなきっかけとなった。りそな銀行に対する資本注入によって、政府は大手銀行は潰さないといった見方が強まり、それまでの不良債権問題における不安感増幅とは別の様相を見せた。これについては市場の地合の変化をかぎ取っていないと相場変化にはついて行けなかったと思われる。
その後の2003年6月には、債券市場でVARショックと呼ばれる急落が起きた。この際の兆候となったのが、6月17日に実施された20年国債の入札であった。20年国債の利率が1%割れのとなり、生保大手が超長期国債の購入を手控えたことが明らかになり、それをきっかけにして、その後、債券相場が急落したのである。このあたりも地合そのものの変化をかぎつけていないと、相場急落に備えることは難しかったのかもしれない。
このように相場の急変には、何かしらの兆候、もしくはきっかけとなるものがある。しかし、それに気がつくためには相場の地合の変化そのものをかぎ取る必要がある。この兆候については、もう少し細かいものを含めて市場に現れていた可能性もあり、それを私が気がつかなかっただけなのかもしれない。ただし、全体として微妙な地合の変化を感じていれば、もしもの時の備えにもなる。そのためには日々の相場の動向は常にチェックしておく必要がある。
ということで、日本国債の相場変動への備えとしては、ぜひ「牛さん熊さんの本日の債券」もご利用いただきたい。
*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***
「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。
http://www.mag2.com/m/0001185491.html
講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp