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日本国債のケースD、第一回

 日本国債に関する関心が再び強まりつつある。このため、現在の日本国債を取り巻く状況を前提に、今後、日本国債の市場からの信用度が変化した場合にどのようなことが想定できるのかを考えてみたい。今回は様式をあらため、某大学のゼミでこの問題を取り上げて議論を行うという会話形式で進行するようにしてみた。タイトルからもおわかりの方もいるかと思うが、これは糸川英夫氏が執筆に関わったベストセラー「見えない洪水、ケースD」を意識したものでもある。


「日本国債のケースD 第一回」

(糸川教授)ゼミを始める。課題としておいた日本国債に関する信用度の変化による影響について、今日は皆と一緒に議論していきたい。それではまず助手の小川君に日本国債の現状について発表してもらいたい。

(小川助手)それでは、先ほど配った資料を見てほしい。2011年度の日本の国債発行総額は169.6兆円、このうち新規国債は44.3兆円、復興債11.6兆円、財投債14兆円、借換債111.3兆円となっている。いまさらそれぞれの国債については説明はいらないと思うが、もしわからない者がいたら、参考文献にしておいた久保田博幸氏の「国債の基本とカラクリがよ~くわかる本」でチェックしておくように。これだけ多くの国債が発行されているが、たとえば10年国債の昨年4月から12月の応札倍率の平均は約3倍程度となるなど、順調に消化されており、札割れも生じていない。

(ゼミ生、岡野)札割れと言えば、昨年ドイツの国債入札で札割れが発生したときには、結構、市場では大騒ぎになったと聞いていますが、どんな状況だったのでしょうか。

(小川)札割れというのは、国債の発行予定額に対し、入札された額が届かなかったことを言うが、その国々によって国債の入札の仕方には違いがあり、たとえばドイツの場合には国債入札において、札割れそのものは珍しいものではない。ただし、昨年11月のドイツの10年債入札では足りなかった割合が39%とかなり高くなっていることが市場では嫌気され、それがドイツ国債の売り要因となり、日本の国債市場にも影響を与えた。しかし、結果としてその影響は一時的なものであった。

(糸川)日本でもたしか2002年9月に、10年国債で初めて国債入札での札割れが発生した。このとき日本の国債相場も急落したが、影響はやはり一時的であった。ただし、今後、札割れが頻発するような事態がもし日本国債で発生すると、市場ではかなり不安感が強まる可能性はある。

(小川)しかし教授、日本でも米国のプライマリー・ディーラー制度といえる国債市場特別参加者制度が機能していることで、何かしらの影響で一時的な札割れが起きるとしても何回も続くなんてことは考えづらいのではないでしょうか。

(糸川)その特別参加者は無理矢理国債を引き受けているわけではない。もし日本国債に対する懸念が強まった際に、国債市場を機能させるため、多少無理しても札を入れることはあるかもしれないが、投資家のニーズがないところに大量に国債を落札することはリスクを抱え込むことになるため、やはり避けるだろう。このあたりのことについては、もう少しあとで議論したいので、小川君、現状に関する説明を続けてくれたまえ。

(小川)はい。今度は国債の残高について確認しておくと、ひとつの目安の数字として、2011年度末として普通国債667兆円、財投債114兆円、政府短期証券156兆円となっている。また、国債の保有者としては国庫短期証券は含まずの数字では、銀行などが38.0%、民間の保険・年金24.8%、公的年金9.4%、日本銀行8.5%、海外6.3%、投信など金融仲介機関が5.3%、家計が3.9%、財政融資資金0.1%、その他が3.6%となっている。ちなみに、海外については国庫短期証券を含むと8.2%に膨らむ。

(ゼミ生、森岡)日本国債の場合の特徴のひとつに海外投資家による保有が少ないことが挙げられますが、それでもここにきて海外投資家の保有が増加していますが、これは良い兆候と捉えても良いのでしょうか。

(糸川)日本国債の海外保有が少ないということは、それだけ巨額の国債を消化するだけの資金が国内に存在しているということにもなり、それが今後の日本国債の安全性をはかる上でのキーポイントにもなる。さらに海外からの国債保有額が増えれば、今後の国債需給には良いニュースではある。しかし、昨年の海外からの日本国債への投資は、どちらかといえば、欧州の信用不安によりリスク回避の資金が逃げてきただけだと思われる。これはユーロ圏の債務危機の強まりにより、米国債やドイツ国債、英国債が買われていたり、また外為市場で円が買われていたことからも、その解釈で正しいと思われる。

続く


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by nihonkokusai | 2012-02-06 10:11 | 国債
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