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ユーロという通貨統合の仕組みの弱点、山口日銀副総裁の講演より

 日銀の山口副総裁は2月2日の講演で、欧州の債務問題について触れており、特にユーロについて「通貨統合の仕組みに弱点があったために、過大な政府債務が蓄積されたという問題」について指摘している。

 「ユーロ圏では、単一の金融政策、すなわち単一の政策金利のもとで、通貨が統一された一方、国としては言うまでもなく別々です。したがって、それぞれの国の間で競争力の格差が拡大すれば、競争力の強い国は貿易収支の黒字がたまり、逆に弱い国は赤字が蓄積していきます。」

 つまり、為替相場の変動を通じて、貿易面での不均衡の問題は和らぐという為替市場の力を期待することはできず、また、それぞれの国が経済状況に応じて別々の金融政策を運営することもできない。このため、ドイツなどの競争力の強い国と、ギリシャなどの弱い国の格差は拡大し、貿易面での不均衡が膨らむと山口副総裁は指摘している。

 さらに「他国の金融機関や投資家は、ユーロという単一通貨のもとで為替変動のリスクを気にする必要がなくなったこともあり、ギリシャなどの国債を低金利で購入し続けてきました。結果的に、赤字国は身の丈以上に外国からの借り入れを増やしてしまい、それに早い段階で歯止めをかけることはできませんでした。ギリシャの場合、こうして過大に発行された国債が結局は返済しきれなくなり、今回の債務問題として表面化しました。」

 ただし、ギリシャについては国債発行増というよりも、債務そのものを隠蔽したことで、市場からの信認を失い、それがギリシャ国債の暴落を招いた面も強かったのは事実である。また、イタリアについてはむしろ財政再建を進め、信認を強めたからこそユーロ域内の他の国からのイタリア国債の購入が増加した面もあった。

 さらに山口副総裁は、「世界的な信用バブルの崩壊による財政状況の悪化という、他の先進国にも共通する側面」についても言及している。

 「一般に、財政の立て直し、すなわち政府債務を減らしていくには、歳入や歳出といった財政そのものへの切り込みに加えて、債務返済の原資である税収を確保していくために経済成長力を強化していくことが必要です。例えば、ポルトガルやイタリアの場合は、財政の状況もさることながら、むしろ成長力の弱さに市場は懸念を持っています。」

 ユーロ圏でのいわゆる南北格差の問題ではあるが、ポルトガルやイタリアの場合は格付け会社による格下げの影響も見逃せない。この格付け会社の影響について、山口副総裁はあまり指摘していない。無視しているわけではなく、何故か指摘を避けているようにも見られ、このあたりやや疑問を感じる部分でもあった。

 「そもそもリーマン・ショック以前の世界の経済成長は、信用バブルによってかさ上げされたものであり、今となっては、そうした経済に再び戻ることはできません。財政の立て直しを着実に進めていくうえでも、リーマン・ショック後の経済構造の変化に対応した新しい成長モデルを構築し、将来に亘って成長力を強化していくことが必要です。この点は、欧州、米国、そしてわが国に共通する非常に重たい課題として存在しています。」

 信用バブルのかさ上げだけではなく、新興国の経済成長にも影響された面も大きいと思うが、特に米国ではリーマン・ショック後には金融が経済を支配していたような構図からかなり変化も見られるのも事実である。そして、低成長、そしてデフレに苦しむ日本にとって、将来に亘って成長力を強化していくことは財政再建にとっても最重要となる。

 欧州債務問題の解決に向けた方策については、山口副総裁は、次のように発言している。

「第1に、繰り返しになりますが、問題国が財政の健全化と成長力の強化に取り組むことです。第2に、こうした問題国の取り組みを支援するとともに、金融システムを立て直すため、資金面で十分な体制を整備することです。第3に、問題の再発を防ぐため、財政や競争力に対して十分な規律が働くよう、ユーロ圏内の統治の仕組みを強化することです。第4に、リーマン・ショックのような金融危機を回避することです。」

 これについては、ユーロ圏において、1と2については徐々にではあるが進められていると思う。3についても協議が進められている。しかし、4についてははっきり言えば無理であろう。金融危機は歴史上、何度も繰り返されている。これは巨大地震と同様に、金融というシステムにある種の一方的な力が働くことは避けられず、これは金融というシステムそのものに内在するリスクであり、それが一気に爆発することは止められない。このため、ショックが生じた際にいかに適切な処置が可能なのか。このあたりは中央銀行にも課せられた大きな責務であると思われる。


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by nihonkokusai | 2012-02-05 11:02 | 日銀 | Comments(0)
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