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FRBの物価目標の設定と日銀の物価安定の理解の類似性

 25日のFOMCの終了後に発表された声明文によると、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導レンジを0-0.25%に据え置くことを決定し、「異例に低いFF誘導水準の維持が2014年後半まで続く事が正当化されるとFOMCは予想している」とした。つまり、事実上のゼロ金利政策を解除する時期を、これまで公表してきた来年の半ばから1年余り先延ばしし、少なくとも2014年の遅い時期まで続ける方針を示した。

 この理由としては、あらたに発表された「長期目標と政策戦略」という別の声明文に理由が示されている。これには16名のFOMCメンバーによる「適切な政策引き締め時期に関する予想」がグラフ化されており、このグラフを見れば利上げ時期の先延ばし理由がわかるようになっている。

 細かいようであるが、現在FOMCの投票権を持っているのは理事会からの7名の理事全員と地区連銀から5名の連銀総裁の12名である。しかし、適切な政策引き締め時期に関する予想は17人が行っている。これは理事が現在定員7名ではなく5名であり、また地区連銀の総裁はニューヨーク連銀以外は毎年変更されるため、この予想については12の地区連銀総裁がすべて予想したことで、理事5名、地区連銀総裁12名、合計17名の予想となっているようである。

 適切な政策引き締め時期に関する予想グラフを見ると、2012年が3名、2013年が3名、2014年が5名、2015年が4名、2016年が2名となっている。また、もうひとつの年末のFF金利予想グラフを見ると、0.5%以上の予想が11名いる。このため、委員会制度をとっているFOMCということで、過半数が金融引き締め派となるのが、2014年であり、年末予想で0.5%以上が11名いるのがはっきりしており、2014年の遅い時期としたとみられる。

 それはさておき、今回、最も注目されているのが、長期的に見た物価のゴールの設定であろう。

 The inflation rate over the longer run is primarily determined by monetary policy, and hence the Committee has the ability to specify a longer-run goal for inflation. The Committee judges that inflation at the rate of 2 percent, as measured by the annual change in the price index for personal consumption expenditures, is most consistent over the longer run with the Federal Reserve's statutory mandate.

 より長い目で見たインフレ率は主に金融政策によって決められる。そこで委員会は物価に対して特定の長期的な目標(goal)を置くことが可能とし、それをPCEの物価指数での2%に置いたのである。

 参考までに個人消費支出(PCE)物価指数もしくはPCEデフレーターと呼ばれるものは、名目PCEを実質化して実質PCEを計算して求める物価指数のひとつである。特に、価格変動が激しいエネルギーと食品を除いたものを「コアPCEデフレーター」と呼び、FRBが物価指標の中で最も重要視している指標のひとつとなっている。その理由としては消費者物価指数に比べて、バイアスが生じにくいためといわれている。今回FRBが総合指数を使ったのは足下物価動向を見るにはコア指数が良いが、長期的に見ると総合指数が適切と判断したものと予想される。

 そして、声明文の冒頭ではこの目標等に関しては毎年1月に見直すことも明らかにしている。

 今回のFRBによる物価のゴール、訳せば目標となり、つまりは物価目標の設定については、インフレ目標やインフレターゲットを連想させるが、特にその数値に法的な拘束力などがあるわけではなく、あくまでECBの「物価安定の量的定義」や日銀の「物価安定の理解」に近いものと思われる。参考までにイングランド銀行はインフレ率がインフレ目標値の消費者物価指数で2%の上下1%を越えると、公開書簡を財務相に送って説明することが義務づけられている。

 日銀は「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質的なゼロ金利政策を継続していく方針を明確化している。中長期的な物価安定の理解とは、金融政策運営にあたり政策委員が中長期的にみて物価が安定していると理解する物価上昇率であり、現在の「中長期的な物価安定の理解」は、「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度である」としている。さらに、この数字は毎年4月に「点検」される。

 このように今回のFRBによる物価目標の設定は、極めて日銀の物価安定の理解に近いものと言えそうである。


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by nihonkokusai | 2012-01-27 09:49 | Comments(0)
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