11月の対外対内証券投資より
今後の日本国債の動向を見る上でも、経常収支の黒字幅の縮小傾向は気になるものの、これがすぐに国債への需給に反映されることは考えづらい。警戒する必要はあるが、現状は債券相場そのものへの影響は限定的となっている。
国際収支の発表には、付表として対外・対内直接投資、対外・対内証券投資も発表されている。このうち11月の対外・対内証券投資を確認してみたい。
この中で主要国・地域ソブリン債への対外証券投資を見てみると、米国のソブリン債への投資は、ネットで1兆3887億円の減少となっている。9月は1兆8812億円、10月も9143億円の増加となっていたが、11月の米債の相場上昇を受けて利益確定売りが入ったものとみられる。
ユーロ圏の国債についてみてみると、ドイツのソブリン債への投資はネットで11月は1641億円の増加となっている。9月も2388億円の増加となっていたが、10月には6849億円減少していた。11月23日にドイツの国債入札で大幅な札割れが生じたが、とりあえずこれによる影響は限定的であったようである。
そしてフランスへのソブリン債の投資を見ると、ネットで11月は4880億円の減少となった。9月は134億円増、10月は678億円増となっていたが、フランスの格下げ観測も出てきたことで、本邦投資家はフランス国債のポジションを減少させてきたとみられる。
そしてイタリアへのソブリン債の投資についてはネットで11月は5102億円の減少に。9月は1389億円減、10月も1208億円減となっていたが、11月はさらに売却を急いだように見受けられる。
これに対して、日本の債券に対する対内証券投資を見てみると、11月はネットで2兆2967億円の資金流入、つまり海外からの買いが入った。このうち短期債が2兆9405億円の増加となっていた。リスク回避の資金が短期債に流入したとみられる。9月も1兆3833億円増と短期債主体に流入増となっていたが、10月は2兆8710億円と反対に短期債主体に減少していた。
対内証券投資の地域別内訳を見ると、目立つのが英国からの短期債への7兆5965億円もの増加である。これは9月も3兆7965億円、10月も5兆1453億円の買い越しとなるなど、非常に大きな割合を占めている。
ちなみに10月に短期債が流出超となったのは、米国が1兆9504億円の減少となり、またフランスが1兆8512億円、ルクセンブルグが1兆597億円といった売り越しになっていた影響が大きかった。ただし、11月もフランスは日本の短期債を1兆482億円、ルクセンブルグも1兆5462億円のそれぞれ減少となっていたが、それ以上に英国からの日本の短期債への投資が大きかったとも言える。
英国からの日本の短期債への資金流入は、ロンドンを経由してのヘッジファンド、中東オイルマネーやアジアマネーなどとみられ、リスク回避の動きによるものであろう。ただし、それは短期債主体であり、中長期債についてはそのような動きは見えず、11月はむしろネットで6438億円の減少となっていた。
「国際収支(発表日別)」財務省のサイトより
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/release_date.htm
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