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見かけ上の財政規律と国債への信認

 国の来年度予算案の焦点となっている、基礎年金の国の負担分を二分の一に維持する財源について、政府は「交付国債」を発行して対応する。

 小宮山厚生労働大臣は、将来の消費税率の引き上げ分を充てることを目的に発行する「つなぎ国債」によって財源を確保するべきだと求めていたのに対し、財務省は、消費税率の引き上げを巡る政府・与党内の議論が予算編成の前に決着する見通しが立っていない以上、「つなぎ国債」の発行は難しいとし、安住財務大臣は「交付国債」を発行する案を示した。

 ここで再び交付国債が登場した。交付国債とは、戦没者などの遺族や強制引揚げを余儀なくされた引揚者などに対して、弔慰金、給付金などの金銭の支給に代えて交付されたが、その後、1997年の金融危機に際し、金融システム安定化策として30兆円の財政資金を用意された際に、その財源として交付国債10兆円と政府保証枠20兆円で賄われた。最近では福島の原発事故の賠償金支払いのため交付国債が活用された。

 交付国債は債券の発行による発行収入金を伴わず、出資金の払込、弔慰金の支払及び損失補償金等、国が金銭の給付に代えて交付するために発行する債券のことである。原則として利子が付けられず、必要に応じて現金化できるが、譲渡は禁じられている。

 交付国債にすることで、見かけ上は一般会計の総額を押さえられ、国債の増発もその分避けられる。これは交付国債の発行により、厚労省が支払いを要求するまで、国債増発を先送りできるためである。

 数字上は来年度予算で政策経費は中期財政計画の約71兆円から約68.4兆円に抑制され、新規国債発行額は44兆円以下を堅持するとしても、この数字はあくまで見かけ上のものであり、これにより財政規律が守れているとは決して言えるものではない。

 このような先送りはもちろん今に始まったものではなく、債券市場参加者もそのあたりのことは重々承知していよう。しかし、日本国債の信認が維持されなければそのツケは自分に巡ってくる。交付国債の発行はそれほど簡単には信認低下には繋がらないというのが市場の一般的な見方だが、その本音は繋がってほしくない、というところだろう。

 交付国債が見かけ上の財源を確保するだけのものであるように、日本国債への信認もあくまで見かけ上のものである可能性がある。強固な信認の上で日本国債は買われ続けており、その結果として外部要因もあり日本の10年債利回りは1%以下を保っている、と断言できる国内投資家は果たしてどれだけいるのであろうか。


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by nihonkokusai | 2011-12-26 09:17 | 国債 | Comments(0)
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