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日本の為替介入における資金調達の仕組み

 為替介入の資金調達の仕組みについては、以前にも紹介したが、日銀サイトのアドレスが変わり、また基本的な仕組みがいまだに理解されていないようにも思われることで、あらためて紹介したい。

 まずは、日銀のサイトに説明があり、これを参考にしていただきたい。

「日本銀行における外国為替市場介入事務の概要」 
http://www.boj.or.jp/intl_finance/outline/expkainyu.htm/

 日本での為替介入は財務大臣の権限において実施される。日本銀行はその際に財務大臣の代理人として、財務大臣の指示に基づいて為替介入の実務を遂行している。

 ニュースなどで以前、しばしば使われていた「日銀介入」という言葉は、やや誤解を招きやすい表現であるとわざわざ指摘している。ただし、最近では政府・日銀による介入と使われることも多くなっているが、いまだに日銀が自らの判断で実施しているとの誤解も一部にあるようだ。

 財務大臣が指示を出し、実務部隊となる日銀の金融市場局為替課は電話もしくは電子ブローキングシステム(EBS)などを使って民間金融機関に注文を出している。

 そして、ここが肝心な為替介入に要する資金の調達についてだが、日本での為替介入はすべて政府の外国為替資金特別会計の資金を用いて行われている。日銀の勘定ではなく政府の勘定において実施されている点に注意していただきたい。

 外国為替資金特別会計とは政府が実施する外国為替等の売買(為替介入等)等の円滑化に資するため設けられているものである。円売り・ドル買い介入の場合には、政府短期証券(為券)の発行により円資金を調達し、外国為替市場における為替介入によりこの円資金を売却しドルを購入する。通常、この代金の決済は二営業日後に行われる。

 ここで為券について少し解説したい。

 政府が国庫や特別会計などの一時的な資金不足を補うために発行されているのが、FB(Financing Bills)と呼ばれる政府短期証券である。発行根拠法により財務省証券、食糧証券、外国為替資金証券などに分かれている。このうち外国為替資金証券が為券と呼ばれるものである。

 現在、TBとFBは「国庫短期証券(Treasury Discount Bills)」として統合発行されている。しかし、発行される毎にそれが短国なのか、財務省証券、食糧証券、外国為替資金証券なのかは区別されている。

 ついでに、財政融資資金法の第9条二項をみると、「融通証券の限度額については、予算をもつて、国会の議決を経なければならない。」とあるが、外国為替資金証券は無制限な発行を防ぐため、毎年度の予算で発行残高の上限が規定されている。2011年度第四次補正予算で195兆円に設定されている。

 円売り・ドル買い介入の場合には、政府が政府短期証券(為券)を発行することにより円資金を調達する。

 1999年以前は為券を日銀が主に引き受けていたが同年以降は、為券は公募で発行され市中消化されている。この仕組のもとでは為替介入は常に不胎化介入となる。なぜなら、円売りドル買い買い介入の場合、まず為券が発行されるが、それによって民間銀行の為券保有が増加し、その購入資金の支払いのため銀行準備が減少する。外貨買い介入が行われると民間銀行の外貨資産が減少し、銀行準備が(先ほどの減少分と同額だけ)増加する。したがって、民間銀行の銀行準備は変化せず、マネタリーベースは不変となる。

 日銀による公債の引受けは、財政法により原則として禁止されているが、FBについては当該条項の適用を受けないと解されており、日銀法でも日銀がFBの引受けを行うことができる旨の条項が設けられている(日本銀行法第34条第4号3)。

 ただし、FBの発行が1999年度以降、原則として市場における公募入札により発行する方式に改められ、この公募入札方式への移行後は、日銀がFBの引受けを行う場合は、政府からの要請に応じて例外的に行う臨時引受けと、日銀の業務運営上必要がある場合に自らが行う引受けに限られることとなった。

 このうち、政府からの要請に応じて実施する臨時引受けには、市場における公募入札において募集残額等が生じた場合と、為替介入の実施や国庫資金繰りの予想と実績との乖離の発生などにより「予期せざる資金需要」が発生した場合に限定されている。また、臨時引受けを行った政府短期証券については、可及的速やかに償還を受ける扱いとなっている。このように、臨時引受けについては、中央銀行による政府向け信用のあり方の観点も踏まえ、一時的な流動性の供給と なるような明確な「歯止め」が設けられている。 (以上、「日本銀行の対政府取引」についてより、http://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/exseifu01.htm/

 非不胎化させるさせないの議論があるが、現在の日本の為替介入の仕組みでは、結果とすればこのように常に不胎化となる。ただし、不胎化されるまでタイムラグの間、日銀の当座預金残高がその分一時的積み上がる。為券を発行し資金返済がなされてももしその分が上乗せされたまま当座預金残高を維持するというような金融調節を日銀が行うならば、 それは結果として、見た目は非不胎化ということになろう。

 ただし、現在のように金融政策で金利をターゲットにして、さらに当座預金残高の超過準備分には政策金利と同じ0.1%の補完金利が付いている。この状況下にあっては、介入資金を形式上当座預金残高に多少反映させたとしても緩和効果そのものは限定的なのであり、あくまでアナウンスメント効果を意識したものでしかない。それを日銀は上手く使っているようではあるが。

 要するに為替介入により、結果として購入している米国債等は、あくまで国内で借金して円を調達して買ったものであり、それを売却して何かに使おうとするのはその分、単純に借金を増加させるだけである。日本政府は巨額の外貨資産を抱えているといってもその多くは借金をして買っているだけであることを認識しておく必要がある。


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by nihonkokusai | 2011-12-25 09:11
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