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イタリア国債の下げを加速させた背景に、国債先物の存在も

 日本の債券市場にとり、債券先物と呼ばれている長期国債先物の存在は非常に大きなものとなっている。日本で国債の先物取引は東京証券取引所において取引されており、債券市場のベンチマークのような役割を果たしている。国債市場の動きを手っ取り早く把握できるのは、国債先物の動きとなっていることは言うまでもない(ただし、これを把握しているのは市場関係者か債券取引に関心ある一部の人に限られるかもしれないが)。

 あらためて紹介すると、日本の長期国債先物は東京証券取引所に上場されている。最低取引単位1億円(ラージ)、売買するのは標準物と呼ばれる債券で、利率は6%の架空の国債となる。受渡日を統一していることで、同じ限月の先物の価格と利回りは一致する。このため、利回りでの売買ではなく価格で取り国されており、1銭刻みで値が動く(ラージ)。上げ下げもわかりやすく、東証に上場されていることで比較的、価格をチェックするのも現物債などに比べて容易である。

 債券先物は現物国債のヘッジを容易にするため作られたデリバティブと呼ばれる派生商品であるが、売買が比較的容易であることで、ヘッジだけでなく売買益を目的として売買が行われており、それ故、海外投資家による売買も積極的で、2010年の東証の集計によると、全体の35.09%の売買を海外投資家が占めている。

 海外の債券先物取引を行っている取引所は、統合などを経て大きく様変わりしているが、代表的なものにユーレックス、NYSEユーロネクスト、CMEグループがある。ユーレックス市場の取扱商品には、ドイツ連邦債の先物取引がある。そして、NYSEユーロネクストには、日本国債や英国債先物が上場されている。米国を代表するデリバティブの取引所のCMEグループでは、グローバルで24時間取引が行える電子取引システムのグローベックスを提供しており、米国債の先物などが終日取引されている。

 国債の発行量、残高の増加などで次第に流通市場が整備され、その過程で国債先物も生まれたわけだが、こちらは各取引所が開発している商品のひとつであり、そこには競争等も出てくる。日本の国債先物に限っても、東証で中期国債、超長期国債の先物、さらにミニ長期国債先物などが生まれたが、残念ながらそれが育つことはなく、日本の債券の先物としては長期国債先物に売買が集中している。

 日本の債券先物は国債先物発祥の地である米国の債券先物と並び、世界有数の先物市場といえるが、欧州市場にも国債の先物は上場されている。欧州市場においては、英国債先物そしてドイツ国債先物などが活発に取引されているが、実はここでも新規参入とともに競争等があり、国債先物が機能しているのは、英国債先物、ドイツ国債先物、そしてイタリア国債先物だけとなる。

 今回のギリシャを発端とした欧州の信用不安、つまりは国債相場の下落に際し、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペイン、ベルギーなど国債市場には先物が存在していないのである。さらに驚くことに、フランス国債の先物も閉店休業状態となっている。

 統一通貨のユーロ圏では、当初はユーロ圏諸国の国債にほとんど利回り格差はなかった。ただし、ユーロ圏の国債のヘッジツールとして先物は必要とされ、そこで起きたのがドイツとフランスの先物のベンチマーク争いであった。それに勝ったのがドイツ国債の先物である。いまでこそ、ユーロの信用不安が進んだことで、ドイツとフランスに利回り格差が生じているが、最近にいたるまでドイツ国債もフランス国債もほとんど同じ物として市場では売買されていたのである。

 ところが2009年9月からユーレックスでイタリアの国債先物が上場された。これは翌年からのギリシャ・ショックを予言して作られたもの、とかではもちろんない。なぜイタリアなのかと言えば、日本と米国に続く国債残高があったのがイタリアであったためと推測される。ただし、当初は上記の理由もあり、あまり売買高等は多くはなかったようである。

 しかし、欧州の信用不安の拡がりにより、ギリシャ・ポルトガルがスペインそしてイタリアに及んで状況が変わってきた。イタリア国債がなぜ売られたのかといえば、イタリアの債務残高規模の大きさとともに、政局への不安などもあり、ユーロ圏内での国債の入れ替え、つまりは域内の金融機関がイタリア国債を売却し、安全とされるドイツ国債を購入するなどしたことも大きい。

 それとともにイタリアの国債の下落には、先物の存在も影響していたとの指摘がある。これは12月9日に行われたQUICKのセミナーで、JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストが指摘されていた(ご本人の了承をいただき掲載させていただきました)。ユーロ圏で数少ない国債先物(実質的にドイツ国債とイタリア国債のみ)において、イタリア国債先物が、イタリアだけでなくスペインなど周辺国のヘッジ等にも使われていた可能性があったようである。

 イタリアの国債が売られた背景についてはスペインなどに比較して海外投資家比率が高かった面などもあるが、さらに売りを加速させた要因としては、このようにイタリア国債先物への他国の国債を含めたヘッジ売りが影響していた可能性がある。さらにヘッジファンドの投機的な動きなども加わり、売りを加速させていた面もありそうである。


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by nihonkokusai | 2011-12-13 08:22 | 債券市場 | Comments(0)
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