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日本国債のバルスを避けるには

 消費増税の行方も怪しくなっているようだが、日本国債でも「滅びの呪文」が唱えられる日が刻々と迫りつつあるように思われる。市場内で、9日の放映で話題となった天空の城ラピュタの有名な呪文「バルス」が唱えられないようするためにはどうすれば良いのであろうか。

財政制度等審議会 財政制度分科会がまとめた下記レポートもおおいに参考になるのではなかろうか。
「財政の健全化に向けた考え方について」

 このレポートをざっと読んでいて、ふと目にとまった箇所があった。下記の部分である。

 「例えば、経常収支黒字国であるにもかかわらず大きな財政赤字と債務残高の増加、そして言語対立等による政治混乱に苦しんでいたベルギーでは、1993年に、実質経済成長率がマイナスの中で、付加価値税の増税などの増収措置と社会保障の効率化などを決定して実行に移し、その後も着実に歳出歳入の両面にわたって財政健全化の取組を行うことによって、2001年度には一般政府ベースでの財政黒字を実現している。」

 実質経済成長率がマイナスの中で付加価値税の増税を行ってまで財政健全化を目指した国もある。しかもベルギーは経常収支黒字国でありながら、大きな財政赤字と債務残高の増加が問題となりまさに現在の日本と同様の状況にあったようであり、このあたりの事例も参考になりうる。

 ただし、財政再建を進めたベルギーの国債は、政権の不在が1年半に渡るという異常な事態が続いていた事に加え、ユーロ圏の信用不安の影響を受けてイタリア・スペインなどの金利上昇にも影響され、10年債利回りは一時6%近くまで大きく上昇していた。このあたり、日本のような経常黒字国の国債急落はありえないとする見方に対して疑問符を投げかけよう。経常黒字国であろうが、財政リスクプレミアムの上昇などにより長期金利の上昇、つまりは国債価格の急落はありうるのである。

 マーケットに少しでも不安心理が生じれば、「バルス」の呪文が唱えられる懸念が強まる。日本国債は暴落するわけないと唱えたり信じるのは勝手だが、国債への信用は、あくまで市場参加者の漠然とした信頼感の上に成り立っていることを認識すべきである。先日のJGB関係者のパーティーに参加した際、近くにいた若手の資金運用担当者たちの会話をつい聞いてしまった。

「日本の国債って大丈夫なんだろうか」
「たぶん大丈夫だと思うけどな」

 市場参加者は日本国債に万全の信頼を置いているわけでは決してない。特に今回の欧州の信用不安で、多少の揺らぎも国内投資家の間では広がっている可能性もある。 その揺らぎが本格的な懸念に繋げないよう何をすべきか。それは今、政治家が判断しなければいけないことである。一度呪文が唱えられてしまうと、取り返しのつかない状況に陥りかねないのが現在の日本の財政状態であり、それを支えているのは、市場参加者の心理状態が大きく影響する国債市場であることを認識しておくべきである。


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by nihonkokusai | 2011-12-11 10:46 | 国債 | Comments(5)
Commented by rurie at 2011-12-12 19:54 x
はじめまして、いつも興味深く拝読させて頂いております。

ところでふと疑問に思ったのですが
財務省や日銀の出す数字にはどの程度の信頼がおけるのでしょうか?
以前は日本が公式に出す数字といえば、非常に信頼性の高い数字であると
相場は決まっていましたが
今でもギリシャの如く、東電の如く、オリンパスの如き粉飾は無く
信頼性の置けるものなのでしょうか?

杞憂であれば良いとは思いますが、3/11以後どうも
特に根拠は無いけれども、眉にツバをつけたほうが良いのではと言う
疑問が拭えません。

また、ここからは頭の体操として、逆の視点から
もし国債は安全であるという為に数字を粉飾するなら
どこを粉飾すると思いますか?
Commented by nihonkokusai at 2011-12-13 11:38
 財務省にとり、消費増税等などを見据えると、日本を必要以上に安全に見せなければならないということはむしろないと思います。財務省や日銀の数値が意図的に操作されているということは考えづらく、政治的な目的での意図的な操作は、日本ではかなり難しくなっていると思われます。

 国債は安全であると見せかけるための数字の粉飾をするとすれば、たとえば国内格付け会社にはどのような状況であれ、最上位格付けを維持させるなんてことも考えられますが、どうも格下げされる懸念がここにきて強くなっているようです。そもそも、国債市場は格下げに影響受けづらいので、これはあまり意味のある粉飾でもなさそうですが。

 財政赤字などもギリシャのごとく粉飾可能かもしれませんが、すでに債務残高がとんでもない数値(GDP比200%超)となっているのが明白で、いまさら多少粉飾してもどうにもならないように思われます。

Commented by rurie at 2011-12-13 16:54 x
素早く丁寧なご回答ありがとうございました。
Commented by rurie at 2011-12-20 14:06 x
交付国債とか微妙な話が出てきましたね。
Commented by nihonkokusai at 2011-12-20 19:49
明日21日に、このブログで交付国債について書いたものをアップする予定ですが、結局、これも先送りですよね。
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