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ECBに見る市場との対話の難しさ

 8日に欧州中央銀行(ECB)は定例理事会で、政策金利であるリファイナンス・オペ金利を0.25%引き下げて年1.0%にすると決定した。また、上限金利である限界貸出金利と、下限金利である中銀預金金利もそれぞれ0.25%引き下げた。総裁会見によれば、利下げについては全会一致ではなく多数決での決定だったようである。

 さらに非標準的手法として、流動性を供給するため期間36か月の長期リファイナンス・オペ(LTRO)を新設する。また、ファインチューニングオペの再開、支払い準備率の2%から1%への引き下げ、適格担保要件の緩和なども行われるようである。

 ただし、証券市場プログラム(SMP)を通じた国債等の買入については、物価安定の使命を外れたことはできない、とドラギ総裁は否定的とも言えるコメントをした上、IMFへの融資を通じた域内国債の買い支え案についても、EU条約に触れるとして応じられないと発言した。

 12月1日にドラギ総裁はブリュッセルの欧州議会で「新たな財政協定が、信頼を回復させ始めるための最重要の要素であることは間違いない」とし「その後には他の要素もあるかもしれないが、順序は大切だ。共有される共通の財政協定を整えることが、何よりも重要だ」と語った(産経新聞)。

 債券購入は「限定的にのみ可能だ」と述べたとも伝えられたが、市場ではこのドラギ総裁の発言から、かなりの期待も込めてか、ECBによる国債買入拡大の可能性ありと判断していたようである。

 ただし、昨日の会見でドラギ総裁は、EU首脳会議で財政規律の強化策に合意すれば、ECBとして積極的に国債を買い入れると言った観測について「答えはノーだ」と言い切り、理事会で議論しなかったと明言した(日経新聞)。

 つまりは市場が勝手に期待してしまったとも言えるものではあろうが、この発言等により欧米の株式市場は大きく下落し、ユーロ圏の債券市場では、イタリア・スペイン国債の利回りが急上昇するなどしてしまった。

 このあたり、ドラギ総裁による欧州議会での発言に考慮が必要であったように思われる。ECBの政策への期待感を出すつもりはなかったのかもしれないが、特に国債買入拡大についてはもう少し明確に否定しておくべきであったと思われる。ドラギ総裁にとって、言わずもがな、であったとしても。

 まだ、ドラギ氏はECB総裁となって日も浅く、マーケットとのコミュニケーションの難しさを今回、かなり認識したのではなかろうか。今後は発言等により気を配ってくる可能性もあるが、とにかく総裁が誰であれ、ECBはあくまでブンデスバンクの血を引いているという事実をマーケットも認識すべきである。

 ちなみにECBは再び政策金利を史上最低水準に戻した。この動き、どこかで見たことを思い出す方もいるのではなかろうか。

 2006年3月に量的緩和政策を解除した日本銀行は、7月にゼロ金利政策を解除し政策金利を0.25%に引き上げ、2007年2月に政策金利を0.50%に引き上げた。しかし、2008年10月に政策金利を0.5%から0.3%に引き下げ、12月には0.3%から0.1%に引き下げた。

 日銀も金融緩和からの方向転換は一時的であり、再び実質的なゼロ金利政策に戻ってしまった。今回のECBの動向を見ても、どうやら歴史は繰り返されるようである。


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by nihonkokusai | 2011-12-10 10:34 | 中央銀行 | Comments(0)
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