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石田日銀審議委員の講演より、最近の情勢のまとめ

 12月7日に行われた石田浩二日銀審議委員の静岡の講演内容が、日銀のサイトにアップされており、今回はその内容について見て行きたい。ちなみに石田審議委員は、住友銀行出身で今年の6月30日に日銀の審議委員に就任している。

 やはり注目すべきは欧州の動向をどのように見ているかであろうが、それについて石田委員は以下のようにコメントしている。

 「欧州債務問題は、09年10月、政権交代により発足したギリシャの新政権が、同国の財政赤字がそれまで公表されていたものよりも大きいことを明らかにしたことに端を発しております。翌10年4月に、ギリシャはEU/IMFに支援を要請しました。その後、問題はより拡大し、同年11月にアイルランドが、また翌11年4月にはポルトガルが同じく支援を要請することとなりました。さらに、足もとではユーロ圏の大国であるイタリア・スペインへの伝播もみられており、これらの国々の国債の利回りが歴史的な高水準まで上昇しています。」

 「欧州債務問題は、発生当初から、国債価格の下落が、こうした国債を多く保有する欧州金融機関の財務状況を悪化させ、これが貸出の抑制へ繋がり、企業・家計の経済活動を下押しし、実体経済を悪化させるとともに、財政赤字をさらに増加させ、一段の国債価格の低下を招くという「負の相乗効果」に繋がることが懸念されていました。夏場以降、こうしたリスクが急速に高まり、既に一部では顕現化しています。」

 欧州の債務問題は、このように金融システム問題に波及する可能性があり、というか、かなり波及しつつあり、それが実態経済にも影響が及ぶ可能性が出てきている。それによりさらに財政を悪化させて、財政再建が滞るという悪循環が生まれつつある。

 「金融市場の不安感が高まるなかで、グローバルな投資家の安全資産選好が強まっており、株式市場の下落を招いたり、相対的に安全とみられる資産に資金が集まることになっています。こうしたもとで、外国為替市場では円が買われているということであります。」

 なぜ欧州の信用不安で、日本の円が買われるのか。これはなかなか理解しがたい部分もあろうが、「安全資産選好」、「相対的に安全」というあたりがポイントとなろう。

 「先行き国際金融資本市場において、投資家のリスク回避姿勢が一段と強まることがあれば、新興国からの資金流出に繋がる可能性もあります。また、欧州金融機関では、ドル資産を圧縮する動き─いわゆるデレバレッジング─もみられており、先行き、新興国向けの貸出が抑制され、貿易金融などに影響が及ぶことも懸念されます。」

 すでにこれについても影響は出てきているとみられるが、リスク回避志向による新興国からの資金流出については、投資信託などを経由して日本の個人投資家にも影響が及ぶ可能性がある。ちなみに、デレバレッジングは負債圧縮とも訳される。

 「わが国の輸出に占めるユーロ圏向けの輸出は1割弱ですが、わが国の主たる貿易の相手国である米国、新興諸国のユーロ圏への輸出比率は高く、これらの国の景気の減速がわが国の輸出に与える影響が懸念されます。また、円高は、企業収益を下押ししますし、企業や家計のマインドを悪化させます。」

 日本からのユーロ向け輸出は全体の1割しかないものの、最大の輸出先である米国や中国などからのユーロ圏への輸出額は多いことで、間接的ながらもユーロの景気減速はこれらの国を通じて日本にも影響を与えかねない。

 「(欧州の)問題の本質は、財政状態や経済力の格差が大きな国々が単一の通貨を利用しているにも拘わらず、財政政策は統合されていないという構造にありますので、抜本的な解決には相当な時間を要すると思われます。抜本的な解決に向かうための時間をつくるうえでも、ひとつひとつの問題に対する処方箋を実行していくことが望まれます。」

 まさにこのあたりが、現在、最大の問題点であり、それについてどのような対策をするべきかが、今回のEU首脳会議でも大きなテーマになるものと思われる。

 「現在、ギリシャなどの各国の国債に非常に高い金利がついています。しかし、つい3年ほど前にはギリシャをはじめこれらの国々の金利は一番信用の高いドイツの金利とほぼ同程度でありました。一旦、国の信用が失われれば、如何に大きな打撃を受けるのかということが分かります。」

 欧州の債務危機は、国や国債に対する信認・信用の揺らぎが大きな要因となっており、いったんその信認を失えば、それを再構築するにはたいへんな努力がひつようとなり、それ以前に世界経済にも大きな影響を与えることが実証された。

 「翻ってわが国をみますと、政府債務残高の対名目GDP比は先進国では突出しています。現在、日本の国債金利が極めて低水準を保っている背景としては、大幅な経常黒字国であること、国債の国内消化率が高いこと、などが指摘されていますが、今後とも低水準の金利が続く確たる保証があるわけではありません。信認をしっかりと確保していくことが大変重要であると考えます。」

 これについてはいまさら言うまでもないことではあるが、日本も決して安泰ではない。債務の規模も非常に大きく、何かのきっかけで日本に対する信認が揺らぐ可能性がないとは言えない。日本国債が暴落するなどありえないから、積極的に財政出動や日銀による国債直接引き受けを行えとの意見をいまだに目にするが、それで信認が失われたら誰が責任をとってくれるのであろうか。


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by nihonkokusai | 2011-12-09 09:59 | 日銀 | Comments(0)
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