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喧嘩を売ったのか警告を発したのか、S&Pはユーロ圏15か国を格下げ方向で見直し

 米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は5日、ユーロ圏15か国の格付けを「クレジットウォッチ・ネガティブ」にするとした。見直し作業は90日以内に行われ、50パーセント以上の確率で実際に格付けが下げられるそうである。

 格下げされる場合は、最も高いトリプルAの格付けを持つ6か国のうち、ドイツ、オランダ、オーストリア、フィンランド、ルクセンブルクについては最大で1段階、フランスについては最大で2段階の引き下げになるという認識を示した。また信用不安が飛び火しているイタリアやスペインについても、格下げとなる場合には、最大で2段階の引き下げになるとしている。ただし、キプロスについてはクレジットウオッチ・ネガティブを維持し、ギリシャはクレジットウオッチに指定していない(NHKの報道などを参照)。

 見直し作業は90日以内に行われるとしているが、8日から9日にかけて開催される欧州連合(EU)首脳会議の結果次第では格下げする可能性があるとの指摘もあったようである。

 EU連合首脳会議を控えて格付けの見直しを発表した理由について、S&Pは「会議でのEU当局の対応が断固としたものだと投資家に受け止められなければ、市場の不安が急速に強まり、政府や金融機関にとって市場からの資金調達がより困難になるおそれがあるため」と説明したそうである(NHKのサイトより)。

 5日にサルコジ大統領とメルケル首相はEU首脳会議を前にパリで会談し、独仏が財政赤字規則に抵触するメンバー国への自動的制裁を支持し、債務上限をユーロ圏諸国の憲法に盛り込むことを一致協力して推進すると表明し、ユーロ共同債に関しては反対であることをあらためて表明した。さらに、共同声明では今回のS&Pによる動きを、認識しているとの発言もあったようである。

 今回のS&Pの動きは、EU首脳会議を前にドイツやフランスを中心として積極的な危機対応を行わなければ、問題がさらに深刻化することを懸念しての、警告とも捉えられる。

 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は11月に格付け会社に対する規制強化を提案していた。格付け会社がギリシャ発の債務危機を助長した可能性があるとして、格付け会社が誤った格付け情報を流した場合、投資家が損害賠償を求められる法令を制定することなどを柱とする新たな規制案を発表していた。また、EU独自の格付け指標も検討するとしていた(毎日新聞)。

 こういった動きに対して、格付け会社が喧嘩を売ったというか買ったような動きにとれなくもないが、もし仮にドイツやフランスもトリプルAを外されるようなことになれば、ユーロ圏の救済基金である欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の格付けにも当然ながら影響してくる。格付け会社S&Pは6日に、EFSFについても、格付けを引き下げる方向で見直すと発表した。

 そのS&Pに対してドイツのショイブレ財務相は、8、9両日にブリュッセルで開かれる首脳会議での打開合意に向けた最高の激励だと述べたそうである。皮肉にも聞こえなくもないが、それならそうと受けて立とうという意思の現れのようにも伺える。一方のS&Pの欧州ソブリン格付け担当者は、財政統合めぐる独仏合意で格下げ回避の可能性も指摘するなど、格付け会社も過度な刺激は禁物とみたのか、せめぎ合いも演じられているように思われるが、いずれにしても8日から9日にかけてのEU首脳会議に注目したい。

 さてもし仮にS&Pがユーロ圏のトリプルAの国の格下げを行えば、公共債残高の上位国、日本 11,213、米国 10,746、イタリア 1,975、フランス 1,696、中国 1,617、ドイツ 1,556、英国 1,344、カナダ 971、スペイン 606、その他 6,150(単位10億ドル、2010年、出所TheCityUK「Bond Markets 2011」)のうち、ドイツとフランスが外れ、トリプルA(S&P)の国は英国とカナダしかなくなる。まさにトリプルAの国債はレッドデータブック(絶滅危惧種)入りしてしまう懸念もある。

 果たして民間の格付け会社がこれほどまでに影響力を持って良いのであろうか。警告を発することはたいへん重要ながらも、相場の攪乱要因となってしまうどころか、ちょっと大袈裟かもしれないが国の存亡にすら関わりかねない。そもそもソブリン格付けは格付け会社にとり勝手格付けであり、収益源とはなっていない。もちろん社債等の格付けをするには、そのベンチマークとなる国債の格付けは必要であろうが、そのソブリン格付けが欧州の信用危機などにより一人歩きし、さらなる影響力を持ってしまった。このため政府や市場、そしてマスコミなどからの注目度も増すことにより、格付け会社にとって本来は意見・見方であるはずの格付けが、大きな武器のような存在になってきていることは、かなり気になるところである。


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by nihonkokusai | 2011-12-07 10:15 | 国債 | Comments(0)
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