牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

イタリアはアリで日本はキリギリス、イタリア国債と日本国債の大きな違い

 1995年あたりからのイタリアと日本の長期金利の推移を見てみると、1995年頃のイタリアの長期金利は10%を超えており、日本の長期金利は4%を超えていた。しかし、その後、日本では不良債権処理にともなう金融システム不安などからのデフレ圧力などにより、長期金利は低下し1997年には2%を割り込んでいる。

 これに対してイタリアの長期金利は、1999年1月の欧州の通貨統合に向けて財政再建を急ぎ、ユーロ税の実施などにより、財政赤字の対GDP比は1996年の7.1%から1997年には2.7%へと急激に低下し、この実施は同時に長期金利の低下を驚異的に進めることになり、1998年にイタリアの長期金利は6%を割り込んだ。

 日本の長期金利は1998年末の運用部ショック後に2%台をつけてからは、2%以下での推移が現在まで続いている。これに対してイタリアの長期金利は1998年以降、今年7月あたりまでは6%以下での推移が続いていたのである。

 つまり日本の長期金利の2%とイタリアの長期金利の6%が1998年以降の上限となり、その後は両国ともに長期金利は低位安定した動きを続けていた。イタリアと日本では長期金利の低下要因は全く異なるものではあったが、長期金利だけの推移を見ると似たような動きとなっていたのである。

 そしてまた日経ビジネスオンラインの記事「イタリア公債も、10年前は約8割が国内消化だった」(小黒一正氏著)によると、「10年前の1997年まで、イタリア公債は約8割が国内で消化されていたことが一目瞭然だ。つまり、この時点で、イタリア公債の海外保有割合は約2割にすぎなかった。しかし、その後の10年間で急速に海外保有割合が高まり、2011年には約4割にまで上昇している。」とある。

 1998年あたりから現在にかけての日本国債における海外保有割合は2%台から5%台あたりでの推移が続いており、95%以上が国内で国債が消化されている状態が続いている。これはイタリア以上に国債残高の多い日本での国債が安定消化されている大きな要因となっている。

 しかし、良く考えてみるとイタリアはなぜ1997年以降、海外保有が増加したかと言えば、積極的な財政再建策を進めていたことと比較的利回りが高かったことにより、特にユーロがスタートしてからは域内の他国の金融機関などがその保有額を増やしていったことが大きな要因であろう。

 それに対して日本ではデフレが続き、金融機関の貸出等が伸びず、その金融機関やリストラを進めて資金を抱えた企業などの余資が国債に向かったことで、国債残高が増加しても国内で消化が可能となった。しかし、金利そのものは低い状態が続いていたこともあり、海外投資家は日本国債への投資は積極化しなかった。

 ユーロ圏の信用不安がイタリアまで及び、その結果、海外投資家などによるイタリア国債の売りなどで利回りが上昇した側面もあろう。しかし、財政状態は日本に比べてむしろ健全ともいえるのがイタリアであり、健全であったが故に海外保有が増加しそれにより売り圧力に晒された。

 それに対して日本は景気や物価が低迷し、いわゆるデフレ下にあり、国内消化で間に合ってしまって海外投資家にはそっぽを向かれ、それ故に海外からの売り圧力には晒されず、健全とは言いがたい財政状態にあっても国債価格が安定推移しているのが日本国債ということになる。

 このように日本とイタリアの1997年あたりからの長期金利の動きは最近まで非常に似通っていたが、イソップ童話で言えばアリのようにがんばっていたイタリアが苦労しているのに対し、ある意味デフレの恩恵で楽に国内消化できてしまったキリギリスのような日本は、未だに面倒で痛みのともなう財政再建に手をつけようとしていない。これはどう見てもおかしな話である。

 このアリとキリギリス、ではなくイタリアと日本の物語は、まだ結末は迎えていないと思う。イソップ物語と同様にいずれ困るのはキリギリスのはずである。戦後なぜか預金好きとなった日本人の国民性とともに、デフレなどを背景にした国内資金による国債の安定消化に頼りきり、財政再建を進めてこなかったツケはいずれ払わされる。その際に起こりうることは、現在のイタリアに起こっているものなど些細な物に見えてしまうのではなかろうか。


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。
http://www.mag2.com/m/0001185491.html

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp




[PR]
by nihonkokusai | 2011-12-04 10:42 | 国債 | Comments(2)
Commented by 96332587 at 2011-12-06 16:20 x
はじめまして。
”イタリアと日本の物語は、まだ結末は迎えていないと思う”
同感だなぁ、と思いました。

これからも面白い記事、期待しています。
Commented by nihonkokusai at 2011-12-07 07:18
ありがとうございます!!。
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31