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日米欧の中央銀行による協調対応策はあくまで時間稼ぎ

 11月30日にカナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行(ECB)、米国連邦準備制度(FRB)およびスイス国民銀行は、国際金融システムに対する流動性支援提供能力を拡充するための協調対応策を公表した。

 日銀は30日の夜に臨時の金融政策決定会合を開き、上記の欧米の中央銀行と協調し、最近の国際短期金融市場の緊張に対応するための措置を講じることになった。具体的には、現在日銀が実施している固定金利方式の米ドル資金供給オペレーションの貸付金利を0.5%引き下げ、12月5日以降のオペレーションから適用する。この引き下げにより、新たな貸付金利は、貸付期間に応じたドル・オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場の実勢金利に0.5%上乗せしたものとなる。

 加えて、現在FRBとの間で締結している米ドル・スワップ取極、およびこれを原資とする米ドル資金供給オペレーションの期限を、2013年2月1日まで6か月延長することとした。さらに、上記中央銀行との間で、2013年2月1日を期限とする為替スワップ取極を締結する。これにより、日銀は5つの中央銀行が必要とする場合に円資金を供給することが可能となるとともに、日銀が必要とする場合に現行の米ドルを含む5通貨の調達が可能となる(日銀、「国際短期金融市場の緊張への中央銀行の協調対応策」より)。

 欧州危機は深刻化し、ユーロ圏周縁国だけでなく中核国の長期金利も上昇しつつあった。これらユーロ圏国債を大量に保有する欧州系の銀行は、資金の取り入れに困難をきたし、ドル資金の調達コストがじわりじわりと上昇してきていた。

 そんな矢先、格付会社ムーディーズは29日、欧州15か国87銀の行の債務格付けを引き下げ方向で見直すと発表した。さらに30日にS&Pは主に欧米の銀行15行の格付けを引き下げた。これらにより欧州の銀行などのクレジット・クランチ(信用逼迫)も意識されつつある中、緊密に連絡を取り合っていたとみられる日米欧の中央銀行が、FRBを中心に協調策を緊急協議し、臨時のFOMCや決定会合などの開催を経て、それを発表したものとみられる。

 欧州の信用不安の強まりによる国債価格の下落は、ユーロ圏の金融機関の経営を悪化させ、新たな金融危機に発展するのではとの懸念もあった。もしそうなれば2008年のリーマン・ショックと同様にそれが米国や日本経済に多大な影響を与えかねず、リーマン・ショックの際と同様に、すばやく中央銀行が連携して動きを見せた格好である。

 しかし、これはあくまで対処療法であり時間稼ぎにすぎず、根本的な解決にはならない。これについては日銀の白川総裁も「時間を買う政策」とコメントしていた。一時的に欧州の金融機関はドルの資金繰りが楽になるかもしれないが、ユーロ圏の国債価格の下落が止まらない限り、危機は収まらない。その問題解決は中央銀行の仕事ではなく、政治家の仕事となる。

 ECBが無限大に国債を買い入れれば問題解決するという意見も出ているが、日銀による国債直接引き受け同様のリスクがあり、財政規律はさらに緩むことになりかねない。イタリアなどのユーロ圏の国債価格の下落を取り戻すためには、あらためてユーロ圏の財政規律を確立するとともに、危機に陥っているギリシャやイタリアなどへのしっかりした支援策を講ずるほかはない。つまりユーロ圏の国債の信用回復こそが、問題解決の糸口となるはずである。


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by nihonkokusai | 2011-12-02 10:08 | 中央銀行 | Comments(0)
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