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国債の信用力を見る物差し

 ユーロ圏における信用不安を背景に、国債の信用力が問われている。ギリシャの債務隠しに始まって、アイルランドやポルトガルの債務悪化が問題視され、それがスペイン、そしてイタリア、フランスなどの中核国に及んでいる。23日のドイツ国債の札割れにより、ドイツ国債そのものの信用力も問われつつある。

 しかし、その国債の信用力を計るものとして格付会社によるソブリン格付けに対して疑問も投げかけられている。少し古い記事になるがWSJの8月の記事によると、WSJが35年間のデータを分析したところ、米国の大手格付け会社がこれまでソブリン債(国債)のデフォルトをほとんど予想できなかったとしている。

 S&Pの格付け対象だったソブリン債のデフォルトは1975年以来15件あったが、同社はうち12件について、デフォルト1年前にシングルB以上の格付けを付与していたという。また、ムーディーズ・インベスターズ・サービスの格付けから1年以内にデフォルトした13政府のうち、11政府はB以上の格付けだったそうである。

 WSJにあったこれらのデフォルト事例の中に、いわゆる先進国の事例は含まれていないことから、格付会社独自のノウハウ蓄積の余地が乏しいとの指摘もある。企業格付の場合には、それぞれの格付会社には多くのデータが蓄積され、ある程度、格付とデフォルト率は整合的な関係が成り立っているとされるが、ソブリン債にもデフォルトの事例そのものが少ないとともに、国のデフォルトと企業のデフォルトでは大きな違いも存在している。

 企業や個人の借り入れには限度があるが、国の場合の借り入れは将来の徴税権が担保となる。しかも返済能力というよりも、どの程度の規模の債務を、どの程度の期間維持させることが可能なのかも重要であり、それを計る具体的な目安はない。たとえばユーロ圏での財政赤字のGDP比3%というのも、あくまでひとつの目安である。債務残高のGDP比も参考数値ながらグロスの債務残高が200%を超えてもいまのところ問題のない国もある。経常収支の黒字や赤字というのも、あくまで目安にすぎない。

 つまり国の信用度を測るための具体的な物差しは存在せず、そのためソブリン格付けであったり、財政赤字や債務残高のGDP比などが参考にされているに過ぎない。

 さらに国の信用度を見る上で、国債が市場でどの程度信認されているのかを計る目安も重要なものとなる。債券がデフォルトに陥るリスクに備える保証料を示すCDSスプレッドもこれを見るためのひとつ参考になる。通常5年物国債のCDSスプレッドが取引されているが、この場合のCDSスプレッドとは、その5年物国債の年間保証料といえるものである。

 ただしCDS市場そのものの規模は小さく、参加者も債券市場に比べて極めて限定的である。市場参加者にとって体感的にわかる相場の状況を数値化したのがCDSとも言える。これはマスコミなど市場関係者以外から見るのにはわかりやすい数値なのかもしれないが、市場参加者がこれを参考に債券相場を動かすようなことはないはずである。それでは本末逆転してしまう。国債市場の地合などを見て、ソブリンのCDSは動いているとも言えるためである。

 つまりは国債の市場からの信用度を測る目安はやはり市場でついた価格、つまりは利回りとなろう。ただしここが危険な水準かどうかを計る目処はない。ユーロ圏の7%というのも、あくまでアイルランド、ポルトガルなどが金融支援を求めた水準であったためで、7%が何かを意味したものではない。もしもそうであるのならば日本も1990年頃に長期金利が7%を超えており、その時点で金融支援を受けていたはずである。

 この長期金利の危険水域とは、その国の財政や経済状況とともに、これまでの長期金利の動きなどからある程度推測するほかない。イタリアの過去の長期金利の動きを見ると、その危険ゾーン、というか節目は7%ではなく実は6%であった可能性がある。

 同様に過去の日本の長期金利の推移を見ると2%という目安の数字が出てくる。現在1%近辺の長期金利からすれば、わずか1%の金利上昇で達してしまう水準である。しかし、これになかなか届かなかったのが、1999年以降の日本の長期金利なのである。もし、長期金利が市場からの信用力を計る物差しであるとするならば、日本の場合にはこの2%というのが大きな節目になっていることを再認識しておくべきかと思われる。


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by nihonkokusai | 2011-11-30 10:04 | 国債 | Comments(0)
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