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国債の信用は何によって裏打ちされているのか

 ユーロ圏諸国の信用問題が再び深刻化してきており、イタリアやフランスの国債が売られている。この欧州の信用問題はギリシャが発端となり、イタリアなどに波及したわけであるが、そもそも国債の制度は歴史上どのように形成されてきたのかご存じであろうか。実は国債は現在債務問題で揺れているイタリアが発祥の地とされているのである。

 12世紀に入り、ベネチア、ジェノバなど北イタリア諸都市は、レヴァント貿易と呼ばれる東地中海の沿岸諸地域との貿易により国際的な商工業都市を形成した。ベネチアでは、政府が交易で富を蓄積した商人たちから資金調達をするようになった。その手段のひとつが十字軍遠征などの戦費調達のため市民からの強制借入であり、そのかわり市政府が利子を払うという貸付債券という仕組みが生まれた。この貸付債券は市場で価格が形成されるなど投資対象としての信用度も高かった

 また、ジェノバでは議会が元利返済のため税収を他の歳入から分離しシンジケート団に預け、その徴税権を担保に出資債券を発行して国に融資するという手段を講じた。このようにベネチア、ジェノバなど北イタリア諸都市において、本格的な政府による債務の調達が開始されたのが国債の起源とされる。

 その後、16世紀に現在のオランダで国債の発行制度が形成された。ハプスブルグ家のカール五世はフランスとの戦争のために巨額の資金が必要となり、領地であったネーデルランド連邦ホラント州の議会に元利金の返済のための税収を与え、その議会への信用を元にして国債の発行制度を確立したのである。

 国王や皇帝に直接、お金を融資するにはリスクが伴う。借金を踏み倒される恐れや、国王には寿命もあるため債務が引き継がれるのかどうかもわからないためである。その点、議会ならば永久機関であり、国王などよりも信用が高くなっていたのである。

 つまり国債とは徴税権を担保に、議会の信用力を背景に発行されるものであり、この形式は現在の国債制度の基になっている。いくら政権交代が起きようとも議会という組織が続く限り、その信用力により国債は発行が可能となる。つまり首相や大統領などの政権担当者の信用力に基づくものでは本来ない。しかし、今回のユーロ圏のソブリン危機と呼ばれるものは、政権についていたものの信用力に対して疑問視されてのものであり、極論ではあるが、議会への信認がある限り国債の信用力そのものにはそれほど影響はないもののはずである。

 しかし、その議会においてもイタリア、ギリシャともに与野党が伯仲するなど財政再建の取り組みが難しい状況にあり、議会への信認も低下したため国債が売られているともいえる。さらにその議会に議員を送り出している国民が、財政再建にともなう痛みを意識していることで、財政再建に遅れが生じ、それが国債の信任を低下させてきたといえる。

 つまり国債という制度は国王という個人の信用はあまりにリスクが大きいことで、それを議会、つまりそこにいる議員は国民に選ばれているわけであることで、国民そのものの信用力に基づいて発行されている。担保がそもそも徴税権であるわけであるため、将来の国民への信任に基づいて発行されているとも言える。何てことはない。国債とは結局、国民の信用力を背景に発行されているものである。

 つまりギリシャにしろイタリアにしろ、信用を回復させるためには欧州連合やIMF、さらにECBの支援によるものではなく、国民自ら自国の国債への信認を取り戻すための努力が必要になる。IMFやECBの支援はあくまで、ショックを一時的に和らげることしかできないものである。ただし、ユーロというやや中途半端なシステムのため、ギリシャ国債の信認にはドイツやフランスの国民も関与せざるを得ない面もある。このあたりが通貨は統一しても、財政は別々で国債もそれぞれ発行しているという国の連合体のある意味弱点ともなっている。だからこそギリシャ、イタリアの問題がフランスなどにも波及しているのである。もちろんそこには域内の金融機関が保有している国債による影響などもあろう。

 このあたりの問題を解きほぐしていかなければ、ユーロ圏の信用問題の解決は難しいものとなる。ギリシャもイタリアも自国内の国民が自らの信認により発行されている国債への信用力を高めないことには、問題は解決しないことを自覚すべきであろう。


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by nihonkokusai | 2011-11-21 14:16 | 国債 | Comments(0)
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