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ギリシャのパパデモス新首相は高橋是清になれるのか

 ギリシャの次期政権の首相に、パパデモス前ECB副総裁が任命され11日に新首相として就任した。ルーカス・パパデモス氏はギリシャの中央銀行であるギリシャ銀行でチーフ・エコノミストや副総裁を歴任したのち、1994年から総裁に就任した。2002年には欧州中央銀行(ECB)副総裁に就任し、8年後の2010年5月に退任した。

 パパデモス氏は欧州統合に向けてギリシャ銀行総裁として、ユーロ導入の準備を行うなどユーロ支持者であり、国民の信頼も厚く、次期首相としてパパデモス氏を望む声が強かったようである。さらに、危機的状況にあるギリシャの大連立暫定内閣には、国会議員ではなく中立的な立場にある人物がふさわしいとみられ、パパデモス氏が選出されたと思われる。それはつまり政治家としての経歴がないということでもあり、そのためパパデモス氏の政治的な手腕は未知数である。ただし、ベニゼロス財務相は留任したことで、ベニゼロス財務相などが補佐する格好となるのであろう。

 中央銀行総裁がその国のトップとなるという事例はあまり多くはないと思われるが、日本では高橋是清が日銀の副総裁、総裁を歴任したのち蔵相を経て首相になった事例がある。高橋是清は首相としてより蔵相の際にその手腕を発揮し後生に名をとどめているが、パパデモス氏も困難な状況にあるギリシャを救えるのであろうか。

 高橋是清は日銀副総裁として日露戦争の際の資金調達などでも有名であるが、蔵相として国債引き受け等により昭和恐慌によるデフレを克服したともされている。この高橋是清による日銀による国債引き受けは、国債市場が整備されていない当時、いったん日銀が引受けるが、それを銀行に売却するという手段を講じ、国債消化をスムーズにさせることで財政政策を行いやすくした。このあたりは日銀での経験や知識が生かされてのものであろう。しかし、日銀による国債引き受けというパンドラの箱を開けてしまったことは確かである。高橋蔵相はそれでもデフレが解消し景気回復が達成できれば、国債発行を抑制するなど自らコントロールすることが可能と認識していたのかもしれない。しかし、いったん開いたパンドラの箱は閉じることはできなくなることを、二・二六事件で自らが暗殺されてしまったことにより、自ら歴史に示した。

 パパデモス首相には、ギリシャの債務問題というユーロ圏のみならず世界を震撼させた問題を解決しなければならない責務がある。日本の高橋是清のように中央銀行総裁の経験を生かし、金融の世界で最も重要視される信用問題、特にギリシャという国の信用を回復するために積極的な手段を講じる必要がある。ただし、その手段やコントロールを間違えると悲劇が生じることも高橋是清は教えてくれている。日本の高橋是清のように後世に名を残すのか、パパデモス首相の今後の手腕に注目したい。そういえば高橋是清もパパデモス氏も穏やかな表情をしているが、内に秘めた情熱は強いところが似ているようである。

 そして、イタリアではベルルスコーニ首相の後任として、経済学者のマリオ・モンティ氏が有力視されているとWSJが伝えている。マリオ・モンティ氏は元欧州委員であり、ヨーロッパ連合の閣僚にあたる役職を務めた経済学者である。

 また、イタリア出身のビーニ・スマギECB専務理事は、結局、2013年5月末までの任期終了前に辞任し、来年1月に米ハーバード大学国際問題研究所へ移籍すると発表した。

 フランス出身のトリシェ前総裁が抜けたことで、ECBの役員会にはイタリア出身者がドラギ総裁とスマギ専務理事の2人いるのに対して、フランス出身者がゼロとなっていた。ベルルスコーニ首相が役員会の席をフランス人に譲るとして、早期に辞任するよう求めていたのに対し、辞任の強制はECBの独立性に対する攻撃であり、スマギ理事はECBの支持を得ているとしてそのまま専務理事にとどまっていた。しかし、ここにきての欧州をとりまく情勢の変化もあり、フランスによる圧力もあってか、辞任することになったようである。

 もうひとつ気になったニュースがあった。米格付会社スタンダード・アンド・プアーズが10日に、フランスの最上級格付けの引き下げを示唆する誤った情報を契約者に配信し、その後訂正したという記事である。

 もしフランスが格下げされると、それが今度はEFSFに影響が及ぶ可能性がある。フランスが格下げされた場合には、残りのトリプルA格の国々が拠出負担を引き上げることが必要になる可能性が出てくるためである。

 この誤情報を受けて10日の欧州市場では、株の下げ幅が拡大しフランス国債が売られた。S&Pは技術的な誤りとしているが、欧州の動向に市場が非常に神経質になっているだけに、このようなミスはかなり問題となろう。このため、フランスのバロワン財務相は市場監督当局に対し、今回の誤情報の原因およびその影響について調査するよう要請したそうである。

 すでにムーディーズはフランスの格付見通しを3か月以内に変更する可能性を指摘しており、S&Pも何らかのアクションを準備していた可能性がある。今回の騒動により今後、格付け会社に対してフランス政府がかなり神経質になることも予想される。フランス政府としては、できれば欧州の信用不安がある程度払拭されるまで、格付け会社には動いてほしくないというのが本音であろう。


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by nihonkokusai | 2011-11-12 12:18 | 国債 | Comments(0)
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