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日本も学ぶべきイタリアにおける信用不安

 イタリア下院での2010年度会計報告に関する法案の採決結果は、定数は630だが、主要野党が棄権したために賛成308票で可決された。ただし、ベルルスコーニ政権が下院で絶対多数を維持するには316票が必要で、それを割り込んだことで、ベルルスコーニ首相は、財政緊縮法案が来週議会で可決され次第、辞任する意向を表明した。

 しかし、9日のユーロ圏の債券市場では、欧州の証券決済機関のLCHクリアネットが、イタリア国債の取引に必要な証拠金を引き上げたことなどをきっかけに、イタリアの10年債利回りが7%台に上昇し、アイルランドやポルトガルが金融支援を余儀なくされた水準であるところの長期金利7%という分岐点を突破した。

 イタリアは債務残高こそ巨額なものとなっているが、ユーロ圏内ではドイツとともにプライマリー・バランスは黒字となっており、2011年の財政赤字はGDP比で4.1%と、これはフランスの5.8%よりも低い数値である。参考までに安全資産として国債が買われている国では、日本は10.5%、米国は9.9%、英国は8.5%、ドイツは1.9%である(IMF調べ)。

 このようにイタリアの足下の財政についてはむしろ健全とも言えるが、政権基盤が脆弱であり、その分、財政再建が遅れがちとなっている。ベルルスコーニ首相は、2013年までに財政の均衡化を目指す一連の措置を提示していたが、年金制度改革をめぐって、国内で連立を組む北部同盟と対立するなどしていた。この与野党での債務削減を巡る対立に加え、ベルルスコーニ首相のスキャンダルも与野党での争点となり、このあたりが市場では嫌気されたとみられる。

 日本と同様に巨額債務を抱えていることで、今後3年で償還を迎える国債のため6000億ユーロ以上の資金を調達する必要があり、その際に長期金利が大きく上昇してしまうと、借換に支障をきたす可能性もある。政治上のリスクにより現実に長期金利が上昇していたことで、さらに信用不安が高まるといった悪循環に陥りつつある。

 ベルルスコーニ首相の辞任ですべてが解決するわけではない。あらたな首相が積極的に財政再建を薦められるかどうかもはっきりしない。しかし、イタリア政府は緊縮財政を確実に進めるため、IMFの監視を受けることで合意するなど、今後、積極的な財政再建策を進める以外に手はないことも確かである。今後の首相選びやイタリアの政局の動向など次第では、イタリアの信用不安が少しずつ改善される可能性はあると思う。

 このイタリアの動向をみると、そのイタリアのGDP比債務残高120.6%を遙かに上回る233.2%の国のことを思わざるを得ない。決して財政状態が悪くない国でも、このように政治の不安定さや財政再建の遅れ、そして巨額の債務残高を背景に信用不安は起こりうる。どこかの国の情勢に非常に似通っているのではなかろうか。民主党総裁選では唯一、財政再建を唱えた野田氏が首相となり、財政再建に向けての消費税引き上げも事実上の国際公約とした。日本の信用不安が起きる前に、何をしなければいけないのか、イタリアの信用不安という事例から学ぶべきことが多いと思う。


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by nihonkokusai | 2011-11-10 09:57 | 国債 | Comments(0)
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