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自らIMFの視察団受け入れを申し出たイタリア政府

 NHKの報道などによると、4日にイタリア政府は緊縮財政を確実に進めるため、IMFの監視を受けることで合意したと伝えられた。1997年11月、韓国政府はIMFに200億ドルの緊急支援を要請し、これにより韓国はIMFの管理下に入った。この際もIMFは韓国に監視団を送り、緊急融資を行うのと引き換えに厳しい緊縮財政などを求めた経緯がある。しかし、今回は、イタリア政府による自発的な申し出に基づくものであり、融資などを伴うものではなく、財政再建策の進捗状況を点検するためのものだとしている。

 以前にこのコラムでも書いたが、イタリアのベルルスコーニ首相は、11月15日までに経済行動計画を提示することを確約し、2013年までに財政の均衡化を目指す一連の措置を提示した。ここには2026年までに年金の支給開始年齢を67歳に引き上げる方針が盛り込まれた。ただし、この年金制度改革をめぐっては、今年初めから女性の年金受給開始年齢について国内で連立を組む北部同盟と対立し、その北部連盟は経済改革の柱となる年金制度の改革で大きな譲歩をすることを拒んでおり、ベルルスコーニ首相は難しい立場に追い込まれている。

 イタリアに対しては、ユーロ圏の他の加盟国から追加の財政再建策を求める圧力が高まっている。イタリアの経済規模はギリシャなどに比べて格段に大きく、もし仮にイタリアの債務問題が深刻化すれば、ギリシャの債務問題の比ではない。イタリアはドイツ、フランスに次ぐユーロ圏で第3位の経済規模となっており、世界の中でも第7位の規模である。公的債務は1.8兆億ユーロとなっている。

 イタリアの10年国債の利回りは、今年6%台に乗せたあとECBによるイタリア国債の購入により5%以下まで低下したが、その後再び上昇基調となり、現在は6.4%近辺にまで上昇しており、このまま分岐点ともされる7%に向けて上昇する可能性も出てきた。

 ギリシャの動向はまだまだ予断を許さない状況ながら、欧州の信用不安はイタリアにまで及ぼうとしている。イタリア政府としては、積極的な財政再建策を進める以外に手はないものの、ギリシャ同様に国民の犠牲を強いる政策に対しては、反対する声も強い。これに対してIMFという外部機関の意見を聞く格好で、国民に対して財政再建に向けた協力を求めることが目的であろう。

 イタリアは過去も財政再建に向けて手を打ってきたことがある。1990年代前半までイタリアは巨額の財政赤字となっていた。このため、イタリア政府は欧州通貨統合への参加に向けて強力な財政改革1992年より実施した 。財政改革開始前の1991年における財政赤字の対GDP比は11.5%であり、これを1998年までに3%以下にしようというのが改革のスケジュールであった。欧州通貨統合への参加がイタリアにとり経済発展の必須条件との見方が多くになり、そのためには財政健全化等の通貨統合参加基準の遵守が重要であるとの認識が国民の間で強まったことがあげられる。

 このため、イタリア政府は増税とともに、歳出削減も強力に実施したのである。イタリアは当時の日本と同様に公共事業投資が多くも利益誘導型の古い政治体制となっていたが、それが崩壊し、新しい勢力が政治をリードしたことも要因と言われる。さらに年金改革も進められ、支給開始年齢の引き上げ、適格要件の厳格化などにより、大幅な支出削減が行われた。

 このように過去を振り返るならば、イタリアは財政再建に向けた努力を行い、財政赤字をGDPの3%以下に押さえ込むことに成功した事例が存在する。「スペインやポルトガルがユーロに参加し、イタリアだけが取り残されるのは、イタリア人のプライドが許さなかった」というイタリア人の国民感情を利用したといった指摘もあったが、今回もギリシャの事例を見せられているだけに、イタリアは自発的な努力で信用不安を封じ込める可能性はあると思われる。


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by nihonkokusai | 2011-11-05 19:42 | 国際情勢 | Comments(0)
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