牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

ギリシャでは何が起きているのか

 ギリシャ議会では5日未明、パパンドレウ内閣に対する信任投票が行われ、信任案は153対145の賛成多数で可決された。与党議員のうち1人が信任投票に反対する方針だと伝えられており、そうなれば与党の全ギリシャ社会運動(PASOK)の議席は300議席中152議席と過半数ぎりぎりとなっていたはずだが、信任投票に反対する方針議員も賛成に回ったようである(棄権が2票)。パパンドレウ首相は、自らの辞任とベニゼロス財務相が新首相として野党側と連立協議を始めると報じられている。

 31日にギリシャのパパンドレウ首相は突然、ヨーロッパ連合が合意したギリシャの債務削減などを柱とする信用不安への包括戦略について、それを受け入れるかどうか国民投票を行うという考えを示した。これによりギリシャの政局が一気に混迷を極めたが、そもそもなぜパパンドレウ首相は極めて危険なカードと言える国民投票を持ち出してきたのか。

 欧州の首脳会議を経て包括戦略はまとまったものの、パパンドレウ首相としては、4日の内閣の信任投票を控え、海外からの反対を覚悟の上で国民投票で国民から賛同を得ない限り、国民に負担を強いる包括戦略を実行に移すことが困難との認識を持ったものと考えられる。ここには野党で二大政党の一翼でもある新民主主義党が大きく関与しているとみられる。パパンドレウ首相は、「ギリシャの政党間で広い合意が必要で、もし合意できるのなら投票は必要ないし、合意ができないのであれば国民との間で合意が必要だ」と述べ、野党と合意できていないことが国民投票に踏み切る理由であることを明らかにしていた(NHK)。

 新民主主義党のサマラス党首は、これまで政府の緊縮策を批判し、ユーロ離脱も辞さないとの姿勢を示していた。しかし、パパンドレウ首相が賭に出ようとした国民投票に対する内外からの批判をみて窮地に陥るとみると、踵を返すように「我々はEUとユーロ圏にとどまる」「追加支援策を無にしてはならない」と表明したのである。

 たしかにパパンドレウ首相が世界を振り回す格好ではあったが、パパンドレウ首相そのものはサマラス党首に振り回された格好とも言える。また、その間に現れたのがベニゼロス財務相である。ベニゼロス財務相はパパンドレウ首相が宣言した国民投票に反対の方針を示し、与党内の有力議員がパパンドレウ首相に対して辞任を要求するような事態となっていた。このため、野党新民主主義党の方針転換とともに、パパンドレウ首相が退陣を示唆したことで、内閣の信任投票において与党内で内閣信任に反対していた議員らも賛成に回ったものとみられる。

 ユーロ圏諸国に対し国民投票の断念を正式に伝えたのはパパンドレウ首相ではなく、ベニゼロス財務相であった。ベニゼロス財務相は火中の栗を拾ったのか、それとも漁夫の利を得たのかはわからない。連立協議の行方も、サマラス党首が与党全ギリシャ社会運動との対決姿勢を鮮明にしているため先行きは不透明である。国民投票という危険な博打は取り下げたことで、ギリシャは支援策を受け入れ、ユーロ離脱という最悪シナリオはいったん回避された格好であるが、新首相となるであろうベニゼロス財務相にとり、今後の政権運営はこれまで以上に困難を極める可能性もある。


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。
http://www.mag2.com/m/0001185491.html
[PR]
by nihonkokusai | 2011-11-05 16:44 | 国際情勢 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31