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金融政策と物価

 米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のビル・グロース氏は、FRBによる追加緩和策は米長期債の利回りを上昇させるため、長期債の保有は避けるべきだとの見解を示したそうである。果たしてこの見方は適切なものであろうか。

 ECBによる国債買い入れは金融緩和というよりも、欧州の信用問題を受けて売られた欧州の国債の買い支えが目的である。つまり、イタリアやスペインの国債利回りを上げさせないようにするのが目的である。このため、ECBは国債買入とともに同額規模の資金吸収を行っている。

 それに対して、FRBによるツイスト・オペや今回検討されるとみられるQE3は、より長い期間の金利を低下させることやMBSの買い入れにより、低迷する住宅市場の梃子入れが目的となっている。それにより景気全体の梃子入れとなれば、物価上昇も促すことになろうが、果たしてそのように動くものであろうか。

 日銀は10月27日の金融政策決定会合で追加緩和策を決定した。これはドル円が最高値を記録していたことを踏まえた円高対応とみられるが、日銀は「物価の安定が展望できる情勢になったと判断するにはなお時間を要すると予想され、国際金融資本市場や海外経済の影響で、経済・物価の見通しがさらに下振れするリスクにも注意が必要のため」と説明していた。つまり円高による景気物価への影響を懸念しての追加緩和と言える。そして、そのために行ったのは、基金による国債の買い入れ増額であった。

 日銀による包括緩和政策の目的は、景気への梃子入れ、つまりはデフレの解消であり、物価を上昇させることが目的である。そのために別枠で国債を買い入れたり、時間軸政策を取り入れて長期金利の低下を促すようにしているものの、もしそれが効果を発揮すれば、物価は上昇し、長期金利は低下ではなく上昇してしかるべきである。

 その意味で、ビル・グロース氏の見解は正しいように見える。しかし、日本の状況を見る限り、残念ながら中央銀行の金融政策では物価の上昇に働きかけることはなかなか厳しいことがわかる。欧米では日本のようにデフレ下にあるとはいえず、状況は異なるとの見方もあるかもしれない。それでも欧州の信用問題などの影響もあるため、FRBの追加緩和による米長期金利の急上昇はむしろ考えづらいのではなかろうか。

 日銀も物価の低迷については依然として頭を悩ませているようで、10月6日、7日の金融政策決定会合には以下のような消費者物価に関する記述があった。

 「何人かの委員は、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、先般の基準改定によって低下したが、物価の実勢に変化が生じた訳ではなく、需給ギャップが縮小するもとで、デフレ脱却の方向に向かっていること自体は変わっていないと述べた。一人の委員は、購入頻度の低い品目を除いた消費者物価指数の前年比がはっきりとしたプラスとなっていることを指摘したうえで、人々の物価観は、ヘッドラインの指数でみるほど、低くはないかもしれないと述べた。ある委員は、基調的な物価変動を捉えるうえで完璧な指数を作ることは困難であり、様々な指標を総合的に判断していくという姿勢が重要ではないかとの見解を示したうえで、基調的な物価動向の適切な捉え方については、引き続き検討を行っていく必要があるとコメントした。」

 なかなか苦しい言い訳にも見えるやりとりである。これを見て、それは日銀による緩和の踏み込み度合いが足りないから、とのご指摘もあるかもしれない。しかし、金融政策による直接的な物価への働きかけは、究極的な手段でもとらない限りは困難であると思われる。究極的な手段とは、たとえば財政ファイナンス目的の国債引き受けなどで、それにより結果として物価上昇という目的は、叶うかもしれない。あとが怖いが。

 中央銀行による金融政策は物価の安定を大きな目的としている。しかし、物価だけを金融政策で操作することは現実にはかなり困難である。そもそも物価は中央銀行の金融政策により短期金利のように上げ下げできれば良いが、短期金利とは異なり、金融政策以外の要因により影響を受けやすい。このため金融政策により物価を動かすには限界があるということを前提で考える必要があろう。


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by nihonkokusai | 2011-11-02 10:35 | 日銀 | Comments(0)
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