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展望レポートから見た国内の金融環境

 10月27日に日銀は経済・物価情勢の展望(展望レポート)を発表した。まさに欧州ではEU27か国に続きユーロ圏17か国の首脳会議を行っているところでの発表でもあっただけに、その欧州に関する認識や国内の金融環境の記述を確認してみたい。

 欧州では「金融システムの安定化に向けた動きも進み始めているが、その具体的な実現を巡る不確実性がなお残ることなどから、市場の緊張状態が続いている」とし、「金融面の緊張は、金融機関の貸出姿勢の厳格化や貸出金利の上昇、企業や家計のマインドへの影響などを通じて、実体経済に波及し始めている。」としている。

 市場の緊張状態については包括戦略の合意により多少緩和された格好となったが、今後の問題として、民間債権者が自発的に削減するヘアカット率を50%とし、金融機関の資本増強について合意がはかられたが、今後も金融機関による貸出抑制などによる景気への影響が懸念され、それが欧州諸国の財政再建の進展を妨げることになる可能性がある。

 「先進国を中心に減速した状態が続くとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で、再び成長率を高めていくと考えられる。」としているが、新興国・資源国の先行きについてはやや疑問も残る。さらに、「こうした見通しについては、経済にきわめて大きな影響を及ぼしかねない金融市場のショックは、回避されることを前提にしている。」との但し書きもあった。これはそういったリスクもシナリオのひとつとして想定しておく必要があることを示しているようにも思われる。

 そして国内の金融環境について、「経営環境の不透明感から起債が困難な電力会社を除き、社債市場の発行環境は良好な状態となっている。企業からみた金融機関の貸出態度についても、改善傾向が続いている。企業の資金繰りについても、震災後に、中小企業を中心に厳しいとする先がいったん増加したが、その後は再び改善している。」として、日本企業については、その取り巻く金融環境は緩和の動きが続いているとしている。

 日本の金融環境が安定しているのに対し、米欧の金融環境との間には、際立った違いがみられとして、「LIBOR-OISスプレッドが、米ドルとユーロについては夏場以降拡大しているが、円については安定している」点を指摘している。LIBOR-OISスプレッドは、短期金融市場での資金調達のしやすさの目安ともなり、期日が先のスプレッドは資金調達についての将来の見通しを示す。もし拡大しているということは、市場での懸念が反映されてのものとなる。

 日本と欧米のこの違いについて展望レポートでは、「第1に、わが国では、金融機関が、欧州ソブリン問題の中心となっている諸国の国債等を、多く保有していない点が挙げられる。第2に、金融機関が保有するリスク全体についても、これまで充実に努めてきた自己資本との対比でみて、概ね抑制された状態にある。」としている。

 「日本の金融システムが、大幅な景気後退や株価下落に対して相応の頑健性を有するようになってきている」との指摘もあったが、日銀の包括緩和政策なども手伝い、国内の金融環境は欧米に比べて強固であるように見える。

 ただし、「国際金融資本市場が一段と不安定化する場合などに、内外の金融資本市場間の連関を通じて株価や債券価格が下落したり、金融機関の資金調達環境の悪化を招くことを通じ、その影響がわが国の金融システムひいては金融環境に及ぶ可能性には、引き続き注意する必要がある」との断りもあった。

 この場合の株価の下落への不安はわかるが、「債券価格が下落したり」という箇所については何を想定しているのであろうか。もし、「内外の金融資本市場間の連関を通じて」の日本国債の価格下落といったものを想定しているのであれば、欧州の債務危機は決して他人事ではなく、巨額債務を抱えた日本にも、何らかのかたちで信用不安が押し寄せる可能性がないわけではないことを、この文面は警告していると言える。


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by nihonkokusai | 2011-10-31 09:48 | 日銀 | Comments(0)
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