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牛熊ゼミナール金融の歴史第22回 江戸時代の貨幣の改鋳

荻原重秀による改鋳

 金銀の海外流出とともに日本国内の金銀の産出量が低下しました。米の生産高の向上や流通機構の整備などにより、国内経済が発展し貨幣需要が強まったものの、通貨供給量が増えなかったこともあり、米価は上昇せずデフレ圧力が強まりました。五代将軍綱吉は豪奢な生活を送っていたことに加え、寺社や湯島聖堂などを建立するとともに、明暦の大火や各地で発生した風水害などにより、慢性的な赤字を続けていた財政がさらに厳しくなり、幕府は1695年に貨幣の改鋳に踏み切ったのです。

 将軍綱吉は勘定吟味役の荻原重秀に幕府の財政の立直しを命じ、荻原重秀はそれまで流通していた慶長小判(金の含有率84-87%)から、大きさこそ変わらないものの金の含有率を約57%に引き下げた元禄小判を発行したのです。また銀貨の品位も80%から64%に引き下げられました。しかし、金銀貨の品位引き下げが均衡を欠いていたことから、銀貨の対金貨相場が高騰し、一般物価も上昇したのです。このため1706年以降、銀貨が4回に渡り改鋳され、1711年の改鋳により銀貨の品位は20%と元禄銀貨の3分の1にまで引き下げられました。金貨については1710年以降、品位を84%に引き上げたものの量目を約2分の1にとどめ、純金含有量が元禄小判をさらに下回る宝永小判を発行したのです。

 これらの改鋳により幕府の財政は潤ったものの、これにより通貨の混乱とともに物価の急騰を招き、庶民の生活にも影響が出たのです。荻原重秀に関してはインフレを引き起こしたといった批判とともに、デフレ経済の脱却を成功させ元禄時代の好景気を迎えたとの見方もあり、評価は分かれています。また、荻原重秀は著作を残していませんが「貨幣は国家が造る所、瓦礫を以てこれに代えるといえども、まさに行うべし」と述べたとも伝えられています。藩札などの紙幣も発行されていたことで、貨幣の発行には信用の裏づけがあればたとえ瓦でも石でも良いとする、現在の管理通貨制度の本質を当時すでに見抜いていた人物でもあったと言われています。

新井白石による改鋳

 六代将軍となった徳川家宣は、新井白石からの建議を受け綱吉時代の財政金融政策を見直し事態の立て直しを図りました。これが「正徳の治」です。金銀貨の質を徳川家康が作らせた慶長と同様なものに戻し、これによって小判貨幣量を減少させるために金銀貨の品位・量目の引き上げを行いました。

 1714年に金貨の品位を慶長金貨 (84~87%)にまで引き上げる改鋳が行われ、元禄・宝永小判二両に相当する品位84%の正徳小判を発行しました。しかし、正徳小判の品位は慶長小判に劣るとの風評が立ち、翌年にはさらに品位を若干高める改鋳を行い、後期の慶長小判と同品位の享保小判(品位87%)を発行したのです。

 新井白石は長崎貿易についても統制令を出して貿易総額を規制し、また、銅の輸出にも歯止めをかけようとしました。加えてこれまでの必需品としての輸入商品であった綿布、生糸、砂糖などの国産化を推進しました。

 元禄文化に象徴される華美・贅沢な風潮を改め、幕府も徹底的な倹約に努めました。しかし、幕府による財政支出の減少や武士層の消費が大きく減退し、現在で言うところの公共投資と個人消費が減少しました。さらに金銀貨の流通量の減少傾向が強まり、物価は大きく下落し、日本経済は再び深刻なデフレ経済に陥ったのです。特に幕藩体制を支えていた米価の下落は農民や武士の生活に深刻な影響を及ぼしました。経済の安定のためには物価をコントロールする必要性があるものの、その難しさというものも荻原重秀と新井白石の政策の影響から伺えます。

将軍吉宗による改鋳

 宗家紀州徳川家から八代将軍に就任した徳川吉宗は、新井白石を解任するなど人事の一新を図りました。そして享保の改革を通じて、危機的状況にあった幕府財政の建て直しのため、倹約による財政緊縮を重視しデフレ政策を実施したのです。これにより物価はさらに下落し、特に米の価格下落が激しくなりました。このため、吉宗は米価対策を打ち出したものの、商人による米の買い上げなどの政策も功を奏さず、その結果、インフレ策として金銀貨の改鋳による通貨供給量の拡大を計ることとなったのです。

 ただし、改鋳に当たってこれまでのように出目といわれる改鋳による差益獲得の狙いはせず、新貨幣の流通を主眼に置いたのです。すなわち、元文小判の金の含有量は享保小判に比べて半分程度に引き下げられたのですが、新旧貨幣の交換に際しては旧小判1両=新小判1.65両というかたちで増歩交換を行ったのです。しかも新古金銀は1対1の等価通用としたことで、この結果新金貨に交換したほうが有利となり、新金貨との交換が急速に進み、貨幣流通量は改鋳前との比較において 約40%増大したのです。貨幣供給量の増加により物価は大きく上昇し、深刻なデフレ経済から脱却し適度のインフレ効果を生み出しました。


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by nihonkokusai | 2011-10-28 17:28 | 金融の歴史 | Comments(0)
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