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個人向け復興債の発行について

 財務省は震災の復興費を確保するため発行される復興債の総額11兆5500億円のうち、1兆5000億円を個人向けとするそうである。報道によると関連法案の成立後、12月からの販売開始を予定しており、これ以降、今年度中に発行される個人向け国債は復興債となる。

 すでに個人向け国債については3年固定利付き、5年固定利付き、10年変動利付きのものが発行されているが、それは12月からこのままの条件で個人向けの復興債として発行されることになる。復興債を購入した個人には、もれなく安住財務相名で感謝状を出すそうである。

 個人向け復興債としては、新たな商品の発行も検討されているようである。これについては、償還期間や金利設定などは現時点では未定のようである。ただし、新たな個人向け国債は利率を引き下げることも検討と日経新聞が伝えていた。個人投資家は個人向け国債の有利性や安全性はある程度理解しているものの、それでも利率が低いと購入は手控えてきた経緯がある。

 個人向け国債は、今年夏のものから10年変動タイプの適用利率の算式が、これまでの「基準金利-0.80%」から、「基準金利×0.66」に変更された。このため10年変動タイプのものの販売額が7月、10月とそれぞれ2千億円台と伸びた。固定利付債との合計の販売額でも7月は4501億円と一昨年の7月以来の規模となるなど販売額は回復している。しかし、5年固定利付きは回復したといっても今年10月の発行分は1100億円で、ピーク時の2007年7月の1兆5964億円に比べて10分の1以下となっている。この原因は明らかであり、当時の利率が1.5%であったのに対し、今年10月発行分は0.32%しかなかったためである。

 震災直後であったならば、何らかのかたちで復興復旧を支援したいとの意識は非常に強かったと思う。しかし、これから個人向けの復興債を購入することで、復興を支援するという意識が高まるであろうか。歴史を見ると、たとえば郵便貯金などが明治以来、国家が危機にある時にその復興の支えとなる財源として使われてきた経緯があった。しかし、個人向け国債については国家のために購入するという意識よりも、安全性の高い金融商品として個人は購入してきたと思われる。

 そして、個人向け復興債については、震災復興のためという国民意識に訴えかけるのであれば、それとともに金融商品としての何らかの優位性を高めたほうが効果的ではなかろうか。たとえば、震災の影響を受けた被災地の子供たちの教育資金のため購入する際には利子が非課税になるなどの措置を講ずることはできないであろうか。米国の個人向け国債である貯蓄国債には教育資金に使う場合には利子が非課税になるという制度があったはずである。制度変更には時間も必要とされるため、なかなか難しい面もあろうが、ぜひこのようなことも検討してほしいと思う。


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by nihonkokusai | 2011-10-26 08:31 | 国債
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