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リーマンショックとギリシャショックの違い

 10月7日の日銀金融政策決定会合後の白川総裁の会見の中で、現在のギリシャを発端とする債務危機と2008年のリーマンショックの違いについての白川総裁の発言があった。これをもとにして、リーマンショックとギリシャショックの違いについて改めて検証してみたい。

 記者からは、リーマンショックのような世界的な金融危機に発展する惧れが無いのかどうかについての質問であったことで、総裁はまず「リーマンショックと現在の状況、正確に言いますと、リーマンショックが起こる前の状況と現在の状況を比較して、どのようにリスクを考えるのかというご質問だと思います。」と質問の意味を整理している。

 リーマンショックはそれ以前に、サブプライム問題が発生しそれが2007年のパリバショックなどを経て、リーマンショックにより世界的な金融経済危機に発展した経緯がある。2010年1月に発生したギリシャショックも、いまだ沈静化されずそれどころか域内金融機関への影響が懸念されるなど、リーマンショックと同様の危機が発生するのではないかとの懸念も出ている。

 「類似点から先に申し上げると、2008年秋のリーマンショックに至る過程では、短期金融市場において金融機関の信用力を懸念する動きが強まり、銀行間金利の上昇圧力が高まっていきました。今回の局面でも、同様の動きがみられており、欧州の金融市場は緊張した状態にあると思っています。」

 「一方で、相違点もあります。リーマンショックの時には、民間金融機関の信認が懸念の対象になっていたのに対して、今回の局面では、通常は信用リスクが意識されずに金融取引で大きな地位を占めている国債が懸念の対象になっており、その分、影響に拡がりがみられます。」

 リーマンショックの際には金融機関の資金繰りに多大な影響を及ぼし、金融のシステミック・リスクにまで発展していった。大規模金融機関が破綻したことで金融市場は極度の不安に陥ったのである。大手金融機関に対する信用が失われた結果、相互で疑心暗鬼となり、危機が増幅していったといえる。

 これに対してギリシャショックは、通常は信用リスクが意識されないはずの国債が懸念の対象となっている。ギリシャの問題については、ギリシャの抱える財政赤字と経常赤字の双子の赤字が問題視されてはいるが、きっかけはあくまで2010年1月に欧州委員会がギリシャの統計上の不備を指摘したことによる信用の失墜である。

 「今次局面では、財政面での支援措置についてはユーロ圏の17の国の合意・承認が必要であることも多く、周縁国への金融支援などの施策実行に、一定の時間を要してしまうという面もあります。これはマイナス面での違いです。」

 民間金融機関の救済ならば、リーマンショック後に米国政府が方針を転換して大手保険会社AIGに対して緊急融資を行って救済したように行動は早い。しかし、これが国への支援、しかもユーロという国を跨いでつくりあげたシステムの中の国への支援となるだけに、実行に時間がかかり、その時間差がリーマンショックとは違うリスクを生じさせている面はある。

 「しかし一方で、リーマンショック時の経験を踏まえ、現在では、金融機関に対する流動性供給や資本の強化について体制の整備が進んでいるという、プラス方向での相違点もあります。ECBは、固定金利かつ全額無制限方式のオペを続けているほか、主要国中央銀行と協調して、年末越えとなる米ドル資金供給の実施を決定するなど、ユーロ・ドル双方の金融市場に潤沢に流動性を供給する体制がしっかり組まれています。」

 「また、金融機関への資本注入についても、欧州の多くの国では、リーマンショックの際に整備された資本注入スキームが現在も存続しているほか、欧州金融安定基金(EFSF)の機能拡充によって、機動的に資本注入をする仕組みも今整備されつつあります。」

 それでは今回、リーマンショック時のように金融システム不安が拡大するのかといえば、リーマンショックなど経験が生かされることで、ある程度、未然に防ぐことは可能であろう。実際にフランス・ベルギー系大手金融機関のデクシアが経営破綻したが、欧州連合が公的支援を含めた銀行の資本増強策をとりまとめる見通しを発表するなどしたことで、市場への影響は限定的なものに留められた。

 だが、欧州の信用不安が当面解消される見通しがたっていないことも事実である。欧州連合とIMFは、11日にギリシャ政府と同国の財政・経済対策で合意したと発表し、ユーロ圏財務相会合などの承認を経て、次回の第6弾となる融資80億ユーロは11月上旬に実行される予定となり、懸念されたギリシャのデフォルトは、ひとまず回避される見込みとなった。しかし、これも根本的な解決にはならない。いったん失われた信用を取り戻すことは至難の業である。特にそれが国であれば尚更である。

 リーマンショックは金融機関への信用が問題視されたのに対し、ギリシャショックは国への信用が問題視されている。このため、もしもギリシャショックがきっかけとなり、リーマンショック後のような経済金融危機をもたらすとするならば、それはリーマンショックとはまったく違ったものになるものと予想される。


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by nihonkokusai | 2011-10-13 08:11 | 国際情勢 | Comments(0)
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