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牛熊ゼミナール金融の歴史第4回 日本におけるお金の起源

 日本におけるお金と金利の起源について、歴史を探りながら見て行くことにしましょう。最近の中学生の社会の教科書などを読んでみると、昔の教科書とは、特に古代の記述が大きく変っていることに驚きます。たとえば青森県で発掘された三内丸山遺跡によって縄文時代の認識が大きく変わっています。縄文人は裸同然の格好をして主として狩猟で生計を立てていたと私たちは習った記憶がありますが、実際にはすでに縄文時代から貨幣を媒介とした財物の交換が広く行われていたことが明らかとなっているのです。

 当時は、矢じり、稲や布帛など交換価値が高いと認められた財物が物品貨幣として機能していました。ただし貨幣の役割のひとつ、価値の保蔵という観点からみると、稲や布などは耐久性の面で難点があり、貯蔵に際しては倉を建てる必要があるなど余分な費用負担も問題となります。富の蓄積が進むにつれて、日本の古代でも金銀といった貴金属のほか、瑠璃玉や紫水晶など耐久性に優れた奢侈品が富の蓄蔵手段として次第に使われていきました。

 金銀などの貴金属を貨幣として利用するに際には、地金などよりも一定の重量に鋳られた固まりのほうが便利です。飛鳥板蓋宮伝承地など7世紀後半の飛鳥時代を代表する遺跡のなかから「無文銀銭」と称される、小孔が穿たれただけの銀製の小円板が出土しています。この無文銀銭も和同開珎銀銭1枚と同等の価値を有する「貨幣」ではないかとする考え方が強まってきています。

 708年の和銅元年にわが国最初の「公鋳貨幣」として「和同開珎」が律令制府により鋳造されました。701年に「大宝律令」が完成し、平城京への遷都の準備中でもあった矢先に、現在の関東地方の武蔵国秩父郡で和銅が発見されました。遷都などで大量の資金が必要としていた政府は、中国などに習って貨幣発行の準備していたところでもあり、政府は年号まで「和銅」と改元して、わが国最初の公鋳貨幣を発行したのです。和同開珎は唐の時代に発行された「開元通宝」がモデルとされていますが、始皇帝が銭貨を統一する際から中国で用いられた円形方孔貨となっています。この和同銅銭には1個1文の価値が付され、江戸時代末までの約1200年間にわたってわが国貨幣制度のなかで重要な役割を果たした銭貨の基礎がこれによって構築されました。

 和同開珎以前に存在した貨幣として上記の「無文銀銭」と「富本銭」が知られていますが、「和同開珎」が広範囲に貨幣として流通した日本最古の貨幣として認識されています。結局この「和同開珎」は畿内とその周辺では貨幣として使われたようですが、地方では富と権力を象徴する宝物としてしか使われなかったようです。

 和同開珎が作られた後、奈良時代から平安中期にかけて12種類の銅銭が公式に鋳造されました。これが皇朝十二銭と呼ばれているものです。いずれも形は円形で中央に正方形の穴が開いている円形方孔貨です。また、銅銭以外に銀貨として和同開珎銀銭や金貨として開基勝宝も作られましたが、広く流通することはなく、通貨としての機能は発揮されませんでした。

 皇朝十二銭を発行順に並べると、和同開珎(708年)、万年通宝(760年)、神功開宝(765年)、隆平永宝(796年)、富寿神宝(818年)、承和昌宝(835年)、長年大宝(848年)、饒益神宝(859年)、貞観永宝(870年)、寛平大宝(890年)、延喜通宝(907年)、乾元大宝(958年)となります。

 皇朝十二銭が発行された目的は、唐の開元通宝を手本に、日本における貨幣制度を整えることでしたが、もうひとつ平城京遷都などに伴う公共事業費のための財源作りも大きな目的となっていました。貨幣1文は平城京造営などの使役に対する1日分の労賃に相当し、原料の銅素材に対して3~5倍に相当する高い価値が与えられたそうです。

 しかし、私鋳銭と呼ばれる偽金を造る者が多く現れたことや、飢饉による米価の高騰に加え、材料となる銅の不足などから銭貨が小型化し、粗悪な品質の銭が次々に発行されたことで、銭の価値はしだいに下落していきました。

 平安時代に編纂された歴史書「日本紀略」に、987年に15の寺院で80人の僧が7日間にわたり銭貨の流通を祈願したとの記述があるように、粗悪となった銭は次第に使われなくなり、また政府による大規模な公共事業もなくなってきたことで、次第に銭を発行する意義が薄れ、乾元大宝を最後に皇朝十二銭の鋳造が取りやめとなりました。 これ以後、豊臣秀吉が貨幣をつくるまでの約600年の間、日本では統一した貨幣は造られませんでした。


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by nihonkokusai | 2011-09-30 19:38 | 金融の歴史 | Comments(0)
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