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ねじれの問題

 9月21日のFOMCで、残存期間6~30年の財務省証券4000億ドルを買い入れ、残存期間3年以下の財務省証券を同額売却するというプログラムを決定した。これは1961年のケネディ政権下で、ドル防衛のため短期資本を流入させることを目的として短期金利の上昇を促すとともに、設備投資促進などによる景気対策としての長期金利低下の両方の効果を促すため行なわれたことがあるツイスト・オペもしくは、オペレーション・ツイストと同様の手段である。

 ただし、ニューヨーク連銀はステートメントでこのオペレーションを「Operation Twist」ではなく、「Maturity Extension Program」と呼称した。つまりFEDの保有する財務省証券の残存期間を延長させるプログラムということである。

 これは1961年のプログラムとは、目的等がやや異なることもあろうが、そもそも「ツイスト」という言葉がすでに死語に近いものであるため、使うことを避けたのではないかと想像される。

 1961年のケネディ政権下で実施されたツイスト・オペのツイストとは、当時流行していた上半身と下半身を逆にねじるツイスト・ダンスが名前の由来といわれている。我々世代には、ツイスター・ゲームなどでツイストと言う言葉に馴染みはあったが、現在はほとんど使われていない。現在、ツイストと同様の意味で使われている日本語は「ねじれ」であろうか。

 「ねじれ」という言葉でまず連想されるのは「ねじれ国会」であろう。現在、衆議院で与党が過半数の議席を持つ一方で、参議院では野党が過半数の議席を維持するという状態となり、ねじれが生じている。これにより、政権運営が滞るといった弊害も生じている。2011年度の公債特例法案が8月26日になってやっと可決成立するなどしたことも、ねじれ国会の弊害といえよう。

 「ねじれ国会」は米国も同様であり、下院では共和党が過半数を握り、上院は民主党が過半数を上回っていることで、日本と同様のねじれ状態となっている。これにより債務上限引き上げ問題が生じることになった。

 そして、現在、最大の関心をもたれている「ねじれ」は欧州であろう。債務問題を抱えたギリシャなどの南欧諸国と、それを救済する立場にあるドイツやフランスとの間に溝が発生し、ユーロそのもののシステムがねじれ状態となっている。

 ツイスト・ダンスがどれだけ健康に良いのかはわからない。また、FEDのツイスト・オペがどれだけ有効な政策であるのかは定かではないが、多少なりとも効果はあると判断した結果ではあろう。ただし、ツイストした状態にある国会や欧州などは、あまり良い状況にあるとは思えない。

 特に欧州のねじれ問題は、世界の金融経済に大きな影響を与えかねない。すでにリーマン・ショック以上の影響が出る可能性も指摘されている。そのキーとなっているのがドイツであろうか、ドイツ国内でも政府と国民の意識の間で、ねじれが生じつつあり、なかなか動きが取りづらい状況にある。

 ねじれを解消するのはかなりやっかいではあるが、ねじれが強まればそのままプツンと切れてしまう可能性もある。そうなれば、非常に大きなショックが生じる可能性があるため、ねじれ状態を少しでも解消すべく、特に欧州では地道な努力が求められよう。


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by nihonkokusai | 2011-09-29 08:34 | 国際情勢
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