牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

歴史で振り返る中央銀行と国債との関係

 世界史の中において、国債と中央銀行の誕生には大きな関係がある。16世紀に現在のオランダで国債の発行制度が形成された。オランダのハプスブルグ家のカール五世はフランスとの戦争のために巨額の資金が必要となり、領地であったネーデルランド連邦ホラント州の議会に元利金の返済のための税収を与え、その議会への信用を元にして国債の発行制度を確立したのである。

 1688年、カトリック国教化をはかるジェームズ二世の専制に対し、イギリス議会はオランダからオレンジ公ウィリアム三世を招請した。オランダ軍を率いてイギリスに上陸したウィリアム三世はジェームズ二世をフランスに追放し、妻メアリ二世とともに王位についた。いわゆる名誉革命である。これにより、権利章典が定められ、立憲君主制の基礎が確立された。

 ウィリアム三世はイギリスに渡る際にオランダの最先端の金融知識を有する金融業者を連れてきたことにより、英国で金融改革が進むこととなった。名誉革命により予算に関する議会の干渉と統制が強化された。そして、課税や法制定には議会の承認が必要であると決めた。フランスとの戦争の費用調達に苦慮していた当時の政府は特定の税を担保とする借入、つまり国債発行を承認することとなり、1692年に国債発行に関する法律が議会を通過した。これにより法律に基づいて議会の保証が付与された国民の債務であるところの国債が発行されたのである。これにより、現在の国債制度が誕生したと言える。

 そして、1694年にフランスとの戦争の費用調達に苦慮していた当時の政権を財政的に支援するため、民間から出資を募りその全額を国庫に貸し上げる代償として、出資者たちが設立したのがイングランド銀行である。

 当初、イギリスの国債の保有者はごく一握りの特権会社に限られていた。イングランド銀行は、特権会社である東インド会社や南海会社がイギリスにおける国債の保有者となり、政府を支援した。しかし、その後の南海バブルの崩壊によって、この図式が崩れ、幅広い投資家を対象とした体制への変化が求められた。このため本格的な国の予算管理なども整えられ、さらなる国債の流動性の確保などが進められていった。

 このように欧州での中央銀行制度と国債制度の成立は大きな関わりがあった。しかし、その後の歴史を経て、中央銀行による国債の直接引受けは禁止されることになる。これは第一次世界大戦後のドイツ、太平洋戦争後の日本などがその教訓を生かして、法律で中央銀行による国債の直接引受けを禁止するようになったのである。

 しかし、日本のバブル崩壊、そして2008年のリーマン・ショック、さらに2010年のギリシャ・ショックを経て、日米欧の中央銀行は再び国債の買取機関のような状態となってきている。

 日銀は現在毎月1.8兆円の国債買入と包括緩和策による国債買入を行い、イングランド銀行は2009年3月5日の金融政策委員会において量的緩和策として英国債の買い入れを行なった。ECBも2010年5月に国債の流通市場に介入することを発表し国債買入を実施した。一時、中断されていたが今年8月からイタリアなどの国債の買い入れを再開している。そして、FRBは2010年11月に2011年6月末まで米国債を6000億ドル追加購入するという、いわゆるQE2を行なった。そして、21日に6~30年国債を買い入れ、償還期限が3年以下の国債を同額売却するというツイスト・オペの実施を決定した。

 ただし、中央銀行による国債買入に対してはECB内ではドイツ出身者などから反対の声が上がり、また米国FOMCメンバーもQE3導入については賛同者は小数派とみられている。イングランド銀行でも量的緩和拡大を主張しているのは現在のところポーゼン委員だけとみられている。

 中央銀行と国債の関係は、その設立過程から関わりを持っていたが、中央銀行が国債との関わりを強めれば強めるほど、過去の歴史を振り返っても、その弊害が生じる恐れがある。

 ここにきて中銀関係者がさらなる国債買入に躊躇し始めているのも、その教訓が頭にあるためであろう。しかし、それに対して日米欧ともに財政が逼迫して動けないという事情も抱えるため、中央銀行頼りの姿勢が強まっていることも確かである。

 現在の日米欧の中央銀行と国債の関わりが、今後の歴史にどのような影響を与えてくるのかは定かではない。しかし、歴史を振り返る限り、このまま中央銀行への国債の依存度が高まるようなことになれば、悲劇が繰り返される可能性はないとは言えまい。


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

「牛さん熊さんの本日の債券」をメルマガで配信しております。

毎営業日の朝と夕方にその日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。
10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。
昼には、コラムも1本配信しています。
毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。
登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。
ご登録はこちらからお願いいたします。

http://www.mag2.com/m/0001185491.html
[PR]
by nihonkokusai | 2011-09-22 13:25 | 国債 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー