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やや物足りなさも感じる宮尾日銀審議委員の講演より

 9月14日の函館市における宮尾日銀審議委員の講演内容が日銀サイトにアップされている。現在の中央銀行の金融政策をまとめるかたちとなっており、頭の整理にちょうど良いものとなっている。

 最近の欧米の中央銀行の動きとして、ECBは8月4日の金融政策理事会において、6か月の固定金利・無制限供給オペを復活させるとともに、「証券市場プログラム(SMP:Securities Markets Program)」による債券買取りを再開したとある。

 そして、8月9日のFOMCにおいてFEDは、現在の経済情勢を前提とすれば、少なくとも2013年半ばまでFFレートを「0-0.25%」というゼロ金利水準に維持することが正当化される可能性が高いとのガイダンスを示したとある。

 上記の政策は日銀の包括緩和政策などとともに非伝統的金融政策と呼ばれるものである。金利を操作する伝統的金融政策に対し、非伝統的金融政策は「ゼロ金利政策を将来にわたって続けることを約束したり、中央銀行の資産規模を拡大する、あるいは資産の構成を変更するといったことにより、さらに強力な金融緩和効果を発揮しようという政策」としている。

 「非伝統的金融政策により、長めの市場金利の低下や各種リスクプレミアムの縮小を促すことなどを通じて、企業・家計の支出行動や投資家の資産選択行動に働きかけ、最終的な景気や物価に影響を及ぼすことが期待される。」

 まさに金融の教科書的な表現であるが、興味深いことに宮尾委員は「時間軸」と言う表現を使っていない。日銀の時間軸政策とFRBが8月4日に打ち出したものは違いがあり、時間軸と言う用語をあえて避けたのかもしれない。

 そして、宮尾委員は非伝統的政策について、その効果や副作用については実際の経験が乏しく、またそれが実施されるような経済状況は、企業や家計が過剰な債務を抱えるなど、金融危機後の深刻かつ長期の景気停滞の渦中である場合が多く、それだけ通常の波及経路が機能しにくい経済環境にあることも予想されるとして、「経験が乏しい領域であることに加え、そのような経済状況であることを考慮すると、過去の政策の経験を参考にしつつも、予期せぬ副作用についても十分な目配りを必要とする、総合的かつ慎重な判断が重要だと考えられる」と注意を促している。

 そもそも非伝統的政策にまで踏み込むということは、その効果が発揮されれば、より長めの金利は低下するのではなく上昇することになり、それによる財政の金利負担が増すことも指摘している。一方で成長が高まることで税収増も期待できると補足している。

 非伝統的政策による望ましくない可能性としては、「金融緩和が過度のリスクテイクや過剰な設備投資を促すことで、中長期的に景気の振幅を拡大したり、無規律な金融緩和が予期せぬタイミングで通貨に対する信認を喪失させたり金利高騰を招くという懸念」を指摘している。

 予期せぬタイミングで通貨に対する信認を喪失させるリスクについては、今後も特に注意する必要があると思われる。この場合の「通貨」に対する信任は、「日本国債」に対する信任と置き換えても良いと思われる。

 そして宮尾委員は最後に「実際の金融政策運営に際しては、さまざまな条件や可能性を丁寧に考慮し、全体として効果が最大限に発揮され、副作用が最小限に抑制されるようタイミングや手段を見極めながら、慎重かつ果断な対応が求められます。」としている。

 あえて追加緩和の具体的な手段は述べていないが、非伝統的手段として述べていた「中央銀行の資産規模を拡大する、あるいは資産の構成を変更する」政策を採るであろうことを示しているようにも思われる。

 今回の宮尾審議委員の講演内容を見る限り、日銀の現在の金融政策の正当性を理論付けるような内容となっており、非伝統的政策による効果もしくはリスクについて、どちらかに比重を置いたような発言にはなっていない。このあたり個人的にはやや物足りなさを感じる部分ではあるのだが。


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by nihonkokusai | 2011-09-16 09:59 | 日銀 | Comments(0)
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