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追加緩和を決めた8月4日の日銀決定会合議事要旨より

 9月12日に8月4日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が発表された。この会合は当初、4日から5日の2日間の日程であったのだが、急遽、1日に短縮され、追加の緩和策を決定した。

 日本時間で8月3日の夕方、スイスの中央銀行であるスイス国立銀行は突然、声明を出して金融緩和策を発表した。そして政府・日銀は4日に、東日本大震災直後の3月18日以来となる円売りドル買いの為替介入を実施、さらに日銀は、4日の午後から予定していた金融政策決定会合を午前11時15から前倒しで開催し、会合そのものも1日だけに短縮したのである。

 これについて議事要旨では、議長である白川総裁が「為替市場における一方向に偏った円高の動きが、経済・金融の安定に悪影響を及ぼしかねないことから、財務省が朝方から市場への介入を実施している」とし、「金融政策運営方針を速やかに決定・公表していくことが、為替・金融資本市場の安定を確保し、企業のマインドの下振れを防ぐ観点から重要であると」述べ、当初2日間を予定していた会合の日程を変更し、本日中に会合を終了するよう議事を進めることを提案し、全員一致で承認された。

 日程短縮という極めて異例な措置はあっさりと全員一致で承認されたのは、財務省の行動に歩調を合わせる必要があると、ある程度メンバー間で共有されていたためと思われる。この会合では追加緩和策が議論されるわけであるが、その理由付けとしては、以下の表現があったが、特に「為替」や「円高」との表現をあえて使ったあたりがポイントのように思われる。

 「委員は、米国の財政問題と景気下振れ、欧州のソブリン・リスク問題、新興国・資源国の物価安定と成長の両立といった海外の経済・財政を巡る情勢や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国の企業マインドひいては経済活動にマイナスの影響を与える可能性があるとの見方で一致した。」

 「多くの委員は、やや長い目でみて、電力供給を巡る不確実性や、円高の進行などを背景に、企業の海外シフトが加速する可能性にも注意する必要があると指摘した。」

 「複数の委員は、特に、震災に伴う供給面の制約を克服しつつあるこの時期に円高が進むことは、企業マインドを大きく悪化させる可能性があると述べ、別の委員は、日本経済の成長期待の低下に繋がる可能性もあると述べた。」

 このように円高懸念オンパレードという状態であったようだが、金融政策運営に関する委員会の検討においては以下のようにある。

 「委員は、足もとおよび先行きの景気・物価情勢を踏まえ、震災からの立ち直り局面から物価安定のもとでの持続的成長経路への移行をより確かなものとする観点から、長めの金利低下やリスクプレミアムの縮小を更に促すべく、基金を増額し、金融緩和を一段と強化する必要があるとの認識で一致した。」

 面白いことに、追加緩和を決定する理由の説明にあたり、「為替」「円高」の文字はまったく使われていない。長めの金利低下やリスクプレミアムの縮小を促す政策をとるのは、あくまで「持続的成長経路への移行をより確かなものとする観点から」としている。

 8月4日の14時過ぎに発表された追加の緩和策の内容は、資産の買入れを10兆円から15兆円に、固定金利オペを5兆円から10兆円に拡大するというものであった。

 この決定に際して、議長、つまり白川総裁は、委員の意見を踏まえて基金を増額するとした場合、具体的にどのような案が考えられるか、執行部に説明を求めている。その前に、多くの委員から過去の増額幅である5兆円を上回る10兆円とすることが適当との考えを示したとあるが、その後、執行部からの説明がすぐに行なわれていたことをみても明らかなように、まさに結果は事前につめられていたことは明らかである。

 今回のようにある意味、臨時の対応、しかも結論を早く出す必要があることで、このような決め方は致し方ない部分はあるものの、委員会制度を採っている決定会合の金融政策の決め方として、これが適切であるといえるものであろうか。

 そして、こうした執行部の説明を受けて、「多くの委員」は、対象資産ごとの内訳について、当該資産の市場規模や日本銀行の財務の健全性を考慮に入れつつ、固定金利オペの拡大や幅広い資産の買入を行うことが適当との見方を示したとある。

 委員は・・・一致したとの表現ではなく、多くの委員は、ということはどうやら違う見方をした委員がいたことをうかがわせる。

 さらに、「複数の委員は、今回、金融緩和を一段と強化する場合には、海外経済を含めて、先行きの様々なリスク要因を前もって相当意識したうえで、十分と考えられる措置を講じるのだという点を、改めて確認しておきたいと述べた」とある。

 表現はかなりやんわりであるが、今回の追加緩和政策の決定にあたり、批判的な発言とも取れる内容である。しかも複数の委員からその意見が出されていた。

 今回のように政府の動きに呼応しての政策の場合、スピードを重視することや、日銀が一丸となって対応する姿勢を見せるため、全員一致での決定が重要との見方もあったと思う。しかし、この追加緩和は円高対応であったことも確かである。過去には円高対応のための金融緩和を進めたことが、バブルを誘発させた要因となった経緯もあるだけに、先行きの様々なリスク要因も意識する必要はあろう。そのあたり複数の委員が多少なり懸念を抱いていたようにも伺える。


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by nihonkokusai | 2011-09-15 08:27 | 日銀 | Comments(0)
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