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大きなリスクをはらむECB内部でのドイツの反対

 欧州中央銀行の金融政策を決定する理事会は、専務理事6名とユーロ圏の17か国の中央銀行総裁で構成されている。このうち専務理事6名はフランス出身のジャン・クロード・トリシェ総裁、ポルトガル出身のヴィトル・コンスタンシオ副総裁、そして専務理事にイタリア出身のビーニ・スマギ氏、スペイン出身のゴンザレス・パラモ氏、ドイツ出身のユルゲン・シュタルク氏、ベルギー出身のピーター・プラート氏で構成されている。

 このうち、ユルゲン・シュタルク専任理事が「個人的な事情」を理由に辞意を表明した。しかし、実際の辞意の理由についてはユーロ圏諸国の国債買い入れに反対したものではないかとの観測が流れている。

 シュタルク氏はドイツの財務次官やドイツ連銀副総裁を経て、2006年6月からECB理事に就任したが、ECBが8月に国債買い入れを再開した際に、ワイトマン独連銀総裁やシュタルク専務理事ら4人が、債券買い入れに反対したとも伝わっている。 ちなみに、ECBの政策決定にあたっては、議事録や議事要旨、さらに票決の結果といったものは公表されていない。

 シュタルク専任理事の辞意を受けて、ドイツ政府は後任にヨルグ・アスムセン財務次官を指名したと伝えられた。

 ECB内部での不協和音が高まっているのには、ドイツがECBによる国債買い入れに対して強く反対していることが背景にある。

 ECBのトリシェ総裁の後任には当初、ドイツ出身者が就任するであろうことが暗黙の了解のようになっており、ドイツ連邦銀行のウェーバー総裁が最有力視されていた。しかし、そのウェーバー総裁が、やはり「個人的な理由」で4月末にドイツ連邦銀行総裁を辞任した。

 ウェーバー総裁は、ECB理事会において、インフレを加速し中央銀行の政治的独立性を損なうとして加盟国の国債買い入れに強硬に反対しており、それがドイツ連銀総裁の辞任、つまりは次期ECB総裁候補から降りた要因となったとみられている。

 そして、ドイツ連銀でウェーバー総裁のあとを継いだワイトマン独連銀総裁も、今年メルケル首相の経済顧問を退いて以降は、国債買い入れに強く反対するようになったと伝えられている。

 ウェーバー・ドイツ連銀総裁が辞任し、同様の理由で今度はシュタルク専務理事が辞意を表明した。そして、中央銀行総裁としてECB理事会メンバーであるワイトマン独連銀総裁もウェーバー氏やシュタルク氏同様に国債買い支えに強く反対している。

 また、シュタルク専務理事の後任となるアスムセン氏は、ウェーバー前連銀総裁の教え子だそうである。教え子だからといって、ウェーバー氏と全く同様の考え方であるとはいえないが、ドイツ連銀の精神を引き継いでいる可能性は十分にありえる。

 ウェーバー、シュタルク、ワイトマンの3氏は、ECBによる国債の購入に強く反対し、それによりECB内部でドイツが孤立化していることも明確になってきた。ドイツ連銀の精神を引き継いだものとして反対する理由は理解できるが、それが欧州の債務危機そのものに影響を及ぼす懸念もありうる。

 特に欧州連合加盟国内部での意見の対立も強まり、欧州危機に機動的に対応できるのはECBだけとなっているような状況にある。本来ECBはドイツ連銀の流れをくんだものであり、その中心的な役割を期待されているドイツからの参加者がECB内部での意見対立を生じさせていることは、そのECBに内部分裂の危機があるともいえるのではなかろうか。まして、今度のECB総裁は、救われている立場の国イタリア出身のマリオ・ドラギ氏となる。

今回の欧州の債務危機により、EU加盟国同士の対立だけでなく、ユーロ統一の象徴的存在であるECB内部で対立が生じていることは、たいへん大きなリスクをはらんでいるように思われる。


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by nihonkokusai | 2011-09-13 08:45 | 日銀 | Comments(0)
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